2023年、noteに投稿したエッセイ「パパと私」が大きな話題を呼び、鮮烈なデビューを果たした文筆家・伊藤亜和さんの最新刊『魔女になりたい』が8月27日に刊行されました。
本作の中にも登場する「バニーガール」時代の印象深いエピソードや、「自分を自分で救えるようになりたい」というメッセージに込めた意味についてお話しいただきました。(全2回の2回目/1回目を読む)
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「虚像」を通して人とつながるのが好きなのかも
――エッセイ集『魔女になりたい』には、バニーガールとして働いているときのエピソードも入っていて、これが非常に面白かったです。伊藤さんがバニーガールのアルバイトを始めたきっかけを教えてください。
伊藤亜和さん(以下、伊藤) 本当に人と話すのが苦手だったので、誰かと話す練習をしようと思って色々なアルバイトの面接を受けているうちに、気づいたらバニーガールになっていました(笑)。始めたのは18歳のときですね。
――エッセイを読んでいると、バニーガールとして働くことが、伊藤さんの人生や人間観に大きな影響を与えているように感じます。具体的には、どのような魅力を感じていますか。
伊藤 今働いているお店はまた少し違いますけど、基本的にバニーガールを求めてやって来る人たちは、「誰か」という個人ではなく、バニーガールという「アイコン」を見に来ているんです。中にいるのが誰であるかは、それほど重要ではありません。だからこそ、他では絶対に言えないような深い話をすることがある。一期一会の一瞬で、クレーターのように深い関係になるんです。
――お互いの素性を何も知らないからこそ、逆に何でも話せる部分もあるのかもしれないですね。
伊藤 そうですね。文章を書くような人間は、自分の経験をいつでも取り出せる場所に整理して置いています。でも、普段自分を顧みないような人に――特に男性に多いのですが――こちらがじっくり話を聞いてみると、実はものすごい経験をしているのに、それを誰にも喋らずに生きていたりする。名前も知らないようなお客様から、そんな“生(なま)”の人生がぽろっとこぼれ落ちた瞬間に出会うと、本当に「人の人生は計り知れないな」と圧倒されます。私はそんな風に「虚像」を通して人とつながれる部分が好きなのかもしれません。バニーをしているときにしか出てこない自分というのがあるのも楽しいんです。
――伊藤さん自身も、普段は人に言えないことをつい話してしまったり?
伊藤 私は人に言えないことはないから、普段から何でも言っちゃいます(笑)。


