「あなた方の他に頼める人いないでしょ!」
2024年10月31日の夜更け、俳優の大泉洋氏から深夜に届いた突然の電話。ツアー本番まで2ヶ月未満という絶望的なスケジュールの中、提案されたのはあまりにも無謀な「丸投げ」の依頼だった。
『水曜どうでしょう』で長年、カメラ担当ディレクターとして活躍する嬉野雅道氏の最新エッセイ『だから僕らは出会わなければならないのです。』(集英社インターナショナル)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)
◆◆◆
ある大物俳優からの電話
それは2024年の12月初頭のある夜のことでした。
札幌のとある小さなライブハウスで、28年一緒に『水曜どうでしょう』を作り続けてきた私と藤村忠寿さんと、同じくスタイリストの小松江里子さんという3人が、さる大物俳優からの依頼で、とある撮影を行うことになったのです。
その大物俳優というのがNHKの紅白歌合戦の司会者もやり、歌手としても紅白の舞台に立って歌いもするという。まことに俳優活動以外でも世間を騒がす……、まぁ大泉洋さんですね。その大泉洋さんのたっての依頼で、とある撮影を執り行う中で私は思わぬ気づきを得て大層感じ入ったものですから、それをこれから書こうと思うのです。
ことの始まりは2024年の10月31日の夜更けのことでした。
くだんの大物俳優から私の携帯に直電が入ったのです。私はちょうどインスタライブの帰りで東京にいて、駅の改札を抜けホームへ向かうところでした。
電話に出て、「どーしました?」と電話の向こうの大物に問い返しますと、大物は私に言いましたね、「先生、実は大変なんですよ」と。大物のわりには私に先生と言ってくれる。
「え? 何があったんです?」
「いえね……」
