それから2週間ほど経って。私と藤村くんは大物俳優・大泉洋さんに指定された都内某所へ急ぎ出向いて、大物の依頼を口頭で承ったのです。
もちろん、ここは、「大泉洋からの依頼」という重要なシーンになりますし、今回の仕事の発端ですから、彼の話がどんな方向へ展開するのか映像で押さえておこうと懇願顔の大泉洋さんにカメラを向け、とりあえず本人の言い分を聞き始めたのです。
ところが、「こんなふうな映像を」という具体的なイメージは彼の口から出てこないのです。それでこっちも、「え? 結局、どんな映像を作ればいいの?」と聞くと、「だから。なんか、奇抜なやつですよ」「会場が爆笑し過ぎて思わず失禁するような強力なやつですよ」と言うばかりで要領を得ない。ただ、「さっきから言ってるように私にはなんのイメージもないし、時間もないし、とにかく早く丸投げしたいんです」という彼の焦りだけは痛いほど伝わってくる。
山田洋次監督に依頼すればいいのに…
でもねぇ、今や大泉洋といえば、世間に知らない人なんていないわけですよ。芸能界にだってファンが多い。なんなら大泉洋さんと仕事をしたいと日頃から熱望している才能ある映像クリエイターだって多数いることでしょう。だったら我々に依頼しなくたってそっちへ依頼すれば良い。それこそ『男はつらいよ』の監督である巨匠・山田洋次さんの映画で大泉洋さんは吉永小百合さんと共演されたわけだから、なんなら山田洋次監督に映像を依頼してもいい。
しかし、いかんせん大泉洋さんの真意は「早く丸投げしたい」ですから。さすがの大泉洋も名のあるクリエイターに「丸投げしたいです」とは発注できない。それは大物であるがゆえに外聞が悪い。それに幕間の映像とは言いながらも、その映像は客席が大いに沸くものでなければと、大泉洋さんは意外とそこは欲深く強要してくるから人を選ぶ。
とはいえ、それがどんな映像なのか大物にイメージはない。なのに期日は迫る。だからとにかく早く丸投げしたい。
そうなると、たしかにこれは誰にでも頼める筋の仕事ではないわけです。
