完全に禁じるのは不可能だが…
「完全に禁じることは不可能」という前提に立ちながら、「どこまでを許容するか」の国際ルールを作ることが現実的な方向性でしょう。しかし現状を見ると、各国は「規制」よりも「開発競争」を優先しているように見えます。
アメリカ、中国、ロシアはもちろん、中東や欧州、アジア諸国でも、AIを安全保障の中核技術と位置づける動きが急速に広がっています。しかも核兵器と違い、AIは巨大な国家プロジェクトだけでなく、民間企業や大学、小規模な研究組織でも開発が可能です。つまり技術の拡散を完全に止めることは、ほとんど不可能に近いと言っていいでしょう。
さらに難しいのは、AIは、民間と軍事の両分野で利用可能な典型的な技術だという点です。画像認識や自動運転、物流最適化といった私たちの日常生活を便利にする技術が、そのまま監視や攻撃システムにも転用できてしまう。平和利用と軍事利用の境界線が極めてあいまいなのです。
自律型兵器システムについても、国際社会で規制を求める議論が続いていますが、主要国の多くが開発を続けており、合意形成は遅れています。
「AI兵器を持った国が軍事的優位に立つ」という競争と、「AI兵器を規制すべき」という人道的要請の間の緊張は、当面解消されないでしょう。しかしこの問いから目をそらすことは、問題をより深刻にするだけです。少なくとも「民間AI企業が意図せず軍事に加担しないための仕組み」を、各企業と各国政府が真剣に考える必要があります。