読み始めた電子書籍が気になる理由
人間は「終わった仕事」よりも、「途中で止まっている仕事」のほうが気になって仕方ない。そんな心理を説明するのが、ロシア出身の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクが提唱した「ツァイガルニク効果」です。
ツァイガルニク効果とは、達成済みの事柄よりも、未完了だったり中断されたりした事柄のほうが、記憶に残りやすく、意識にのぼり続ける現象を指します。きっかけとなったのは、ウィーンのカフェで給仕係が「まだ会計していない注文」は正確に覚えている一方、支払い済みの注文はすぐ忘れてしまう様子を観察したことだとされています。
身近な例を考えてみてください。「3巻まで無料!」と電子書籍のキャンペーンを読み始めたら、続きが気になって4巻以降を購入してしまった、という経験はありませんか? 動画配信サービスで無料公開中だったドラマシリーズの第1話の続きが気になって、有料会員に切り替えてしまうのも同じこと。
「続きが気になる」という未完了状態が頭に残り続けるため、つい購入してしまうのもツァイガルニク効果を巧みに利用したマーケティング手法です。「途中で止まっている」という状態は、人を行動に駆り立てる強力なエンジンになるのです。
「中断したものが気になる心理」を活用
さて、このツァイガルニク効果の応用版として、とくにビジネスの現場で力を発揮するのが、心理学者マリア・オヴシアンキーナーが提唱した「オヴシアンキーナー効果」です。これは、未完成で中断した作業を再び完了するまで実行したくなる心理のこと。
ツァイガルニク効果との区別が少々紛らわしいですが、ツァイガルニク効果が記憶に残るという「認知」の現象だとすれば、オヴシアンキーナー効果は実際の行動を促すという点でより実践的な「行動」効果を指します。
オヴシアンキーナーは興味深い実験を行ないました。被験者に粘土の人形作り、知恵の輪、パズルなど10種類の簡単な作業を指示し、合計280個の作業のうち、約半数の141個を途中で意図的に中断させました。