すると興味深いことが起きました。実験がいったん終わり、誰からも「続けていい」と言われていないにもかかわらず、多くの人が自分から中断された作業に戻って再開し始めたのです。しかも、その多くは中断からわずか20秒以内でした。

つまり人は、「途中までやったのに終わっていない」という状態を、そのまま放置するのが苦手なのです。中断された作業ほど頭に残り、「最後まで終わらせたい」という気持ちが自然に生まれる。この心理を示したのが、オヴシアンキーナー効果です。

すぐに取り入れられる「2分ルール」

オヴシアンキーナー効果が示しているのは、「いったん始めてしまえば、人は続きをやりたくなる」ということ。逆に言えば、自走を阻んでいる最大の壁は「最初の一歩を踏み出すこと」だと言えます。この事実を踏まえた実践的な方法論が、ジェームズ・クリアーが著書『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(パンローリング)で紹介した「2ミニッツ・スターター(2分ルール)」です。

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クリアーは、「新しい習慣を始めるときには、それは2分以内でできるものであるべき」「重要なのは、習慣をできるだけ始めやすくすること」と説きました。人は「続けること」ではなく「始めること」でつまずくことが多い。だからこそ、最初の行動を極端に小さくして、心理的なハードルを下げる。一度始めれば、オヴシアンキーナー効果が働いて、そのまま続いていくことが多い、という発想です。

2ミニッツ・スターターのポイントは3つあります。

第1に、「継続」ではなく「着手」にフォーカスすること。
第2に、完璧を目指さないと最初から決め、面倒という心理的バリアを外すこと。

第3に、いったん始めてしまえば、オヴシアンキーナー効果によって「完了するまでやめられない状態(一種の行動の慣性)」が生まれることを期待すること。

変えたいのは「意識」ではなく「仕掛け」

冒頭の「なかなか動き出さないチーム」に当てはめてみましょう。メンバーが指示待ちになっているのは、能力の問題ではなく、「最初の一歩を踏み出すための心理的コスト」が高いからかもしれません。