アメリカ西海岸のストリートから出たダンサーたち
ムーンウォークの起源として最も有力な説が、ダンサーであるジェフリー・ダニエルにまつわるものだ。
彼らが暮らしていたアメリカ西海岸では当時、「ポッピング」や「ブガルー」と呼ばれる、身体をカクカク動かしたり、なめらかに滑らせたりするストリートダンスが若者の間で流行していた。
遊びから生まれた動きを、路上の若者たちが競い合いながら、技として磨いていったムーブメントだったわけだ。
後に音楽バラエティ番組『ソウル・トレイン』のバックダンサーや、ソウル&ファンク・グループのシャラマーとして活躍したジェフリーのダンスにマイケルは魅せられ、ダンスの教えを請うた。「バッド」や「スムーズ・クリミナル」のMVの振り付けやダンスに参加している。
実は、1970年代後半からさまざまなメディアでジェフリーは「バックスライド(backslide=後ろ滑り)」という技を披露している。これらのことから、ジェフリーのバックスライドを「ムーンウォーク」のアイデア発想源のひとつとする説がある(その技を直接教えたのは、「スムーズ・クリミナル」のMVにも出演した、ダンサーのキャスパー・キャニデイトとクーリー・ジャクソンだという)。
そして、モータウン25周年特番でマイケルが見せた「バックスライド」の動きは、マスコミなどから「ムーンウォーク」と呼ばれて世に広まった、ということだ。
デヴィッド・ボウイにマルセル・マルソーも?
ただ、「ムーンウォーク」の起源説はこれにとどまらない。マイケルが、デヴィッド・ボウイのステージを発想源にしたという説もある。
『デヴィッド・ボウイ・アンド・ヒズ・ヒーローズ』(トム・ハグラー:著、荒木重光:訳/リットーミュージック)によれば、1974年にアメリカでの『ダイアモンドの犬』ツアーをマイケルが観て、《ショーの後、ジャクソン一家はボウイを夕食に招待し、マイケル・ジャクソンは、革命的な動くステージセット、曲、そして何よりも振り付けについてボウイを質問攻めにした。中でも、後に“バックスライド”と呼ばれるムーブに夢中になっていた》という。



