「本を読んでも勉強が進んだ気がしない」。そんな悩みを抱える人は、インプットの罠にハマっているかも? 米国の過酷な博士課程を生き抜いた筆者が、たった5冊の本から一生使える「知識網」を編み出す秘訣を伝授する。まずは5冊の関連付けの言語化に負荷をかけよ。
「勉強を手に入れたい」。そう願う人の背中を後押しし、着実に階段をのぼるための心構え・道具立てを可能にしてくれるエッセイ連載、第10回目です。
※本連載は『勉強を手に入れる』と題して書籍化される予定です
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執筆に必要なのは良い知識網を持ち、その運用方法を知っていること
本連載も第10回となりました。全体で25回くらいを想定しているので、今回が半分というわけではないのですが、ともあれキリがいいので、本連載の核になるアイディアをひとつきちんと書いてみたいと思います。
これまで数回にわたって「知識網」の話をしてきました。今回は、これの作りかたについて、きわめてプラクティカルな話をします。
わたしは、授業や講演での即興のトークでも、あるいは依頼原稿を短い期間で書き上げるんでも、さらには日々の学術論文の執筆においても、この知識網、すなわち知のネットワークを動員しています。
それは誰でも多かれ少なかれそうなのですが、わたしが強調してきたのは、これは知識の「量」の問題ではないのだ、ということです。ものすごく物知りだからペラペラ喋りつづけたり、たくさん書いたりできるわけではない。
じっさい、こうしてわたしの文章を読んでくださっている読者のみなさんも、あるいはわたしの著書や講演に触れたことがあるひとも、まず間違いなく、わたしが「物知り」だからという理由で見たり聞いたり読んだりしてくださっているのではないと思います。
それは執筆のスタイルの問題でもあるのですが、ともかく問題は、にもかかわらず生産的だということです。
それはなぜなのか、という問いは今回の焦点ではありません。その問いの答えは、よい知識網を持っているから、そして、そのうまい運用方法を知っているからです。
今回の焦点は、ではみなさんはどうすれば自分の知識網を作れるのか、その第一歩の踏み出しかたの伝授です。
ではいきましょう。
仕入れた知識を編むということ――トピックを絞り、まずは5冊の本を選び、その関連付けを言語化せよ
例によって、わたしの院生時代の体験談からはじめます。と言っても、今回はごく一般的な話です。つまり、「あれも読まなきゃ、これも読まなきゃ」という状態がずっと続いていて、日々すこしずつ読んではいるものの、いっこうに「勉強が進んだ」という気がしない。勉強を頑張ろうと思っている多くのひとは、この悩みを抱えていると思います。
こういう状況はツラいです。でも、自分の人生を振り返るとわかると思うのですが、この感覚はいっぱい読んでも消えません。だから「勉強を手に入れる」にあたっては、「あれも読まなきゃ、これも読まなきゃ」という「対策」は間違っています。
ではどうすればよいか。読む本を減らすのです。
ただし、もちろん、ただ減らせばよいのでもありません。そこで、今回のタイトルにある、リーディング・リストの出番です。
リーディング・リストとは、読むべき本のリストです。これを作ろうという話なのですが、ただ、あなたはここで、「あれもこれも読まなきゃ」をすべてリストに放り込んではいけません。そういったリストなら、読書家のみなさんは、すでに種々の管理ツールで作っているでしょう。でも、それでは現状と同じです。
ここでやるべきことは、トピックをひとつに絞ることなのです。
つまりこれは、なんでもかんでも知りたいことを無尽蔵に知ろうとするためのリストではありません。これはいわば、ひとつの専門を手に入れるための作業です。
たとえば「経営者のリーダーシップ」に決めたとしましょう。Amazonで検索すると、「経営者 リーダーシップ」でも100件くらいヒットする。各書籍をクリックすれば、関連書籍はどんどんふくらむ。
これは、規模の違いはあれ、どんなトピックでも似たようなことが起こります。そこでどうするか。あらかじめ冊数を決めて本を厳選するのです。
何冊に絞ればよいか。ズバリ言いましょう。5冊です。
5冊でリーダーシップの専門家になれるか。なれません。でもここでの目的は、「専門家になる」ことではない。上に書いたことを読み直してみてください。わたしは「専門を手に入れる」と書きました。ここで「専門を手に入れる」とは、そのトピックについての自分なりの知識の網を持っているということです。
それをどうやってつくるか。ここが重要です。
まずは1冊読み、つづいてもう1冊読みます。2冊読んだら、1冊目と2冊目の関係を自分の言葉で言語化します。3冊読んだら関連付けはもっと難しくなるのですから、2冊目の時点で、まずは最初の2冊の関係を語れなくてはなりません。そうやって、インプットしたものの消化にきちんと負荷をかけるのです。
この5冊は、重要とされる古典を選んでもいいし、自分でインスピレーションで選んでもいいし、なんならAIに選ばせてもいいです。ただし、この関連づけの言語化だけはAIにやらせてはいけません。ここできちんと負荷をかけることが、「これはたしかにこうなっている」という手応え、つまり一種の専門性の基盤になるからです。だからこの5冊は「まとめ本」みたいなのも避けてください。この作業が、知識網をつくる――すなわち、知識を「編む」という作業なのです。
あなたの勉強が進まないのは、読書量が足りないからではありません。読める範囲の少量の本を組織化できていないから、つまり、仕入れた知識を編む作業を怠っているからです。

