『なぜ日本が世界に必要なのか』(文春新書)

 9月17日発売の『なぜ日本が世界に必要なのか』(文春新書)で、フランスの歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド氏は、崩壊過程にある「アメリカ帝国」――そして世界――の行く末は、第2次大戦の敗戦国である日独の選択にかかっている、と指摘しています。

 同じ「直系家族型」〔長子相続で親子関係は権威主義的で兄弟関係は不平等〕の日本とドイツの比較は、「ライフワーク」と言えるほど、トッド氏の研究において大きな意味をもっています。技術水準の高さ、階層秩序の原理、米英仏より低い女性の地位、「自分たちは他民族とは異なる特別な存在だ」という民族意識が、日独の共通点です。これらの特徴はすべて権威主義的で不平等主義的な「直系家族」――ドイツの「ホーフ(Hof)」と日本の「イエ(Ie)」――によって説明できます。

 しかし、最新著でトッド氏は、日独の「共通点」以上に「違い」を強調しています。〈ドイツ人は日本人と同様、規律正しく効率的な社会を築いていますが、日本人がもつユーモアのセンスがドイツ人にはない。地政学においてはユーモアのセンスも時に必要です。日本人は生真面目すぎるドイツ人のように振る舞うべきではないという歴史的瞬間をいま迎えていると感じます〉と。

ADVERTISEMENT

「自然人らしさ」、ユーモアという日本の強みを活かして、生真面目すぎるドイツとは違う道(対米自立への道)を日本が進むことを世界が必要としている――これが日本を愛するトッド氏のメッセージです。

(※本稿は、前掲書から一部抜粋したものです)

◆◆◆

 ドイツは、私が「直系家族型」と定義する社会で、ヒエラルキー(階層秩序)を受け入れる。しかし、上下関係を重んじるこの社会の問題は、自分より上に誰もいないリーダーが独特の不安に苛まれることだ。ドイツは、米国を“主人”とみなして追従することでこの不安を解消できたつもりでいた。しかし、その肝心の“主人”自身が攻撃的で不規則で予測不可能な言動を繰り返し、要するに“狂気”じみてきたのだ。そしてドイツ人の精神は、高慢な軍事至上主義に支配されつつある。

(略)

「直系社会におけるリーダーの不安」を解消するために米国の支配を受け入れることで安心を得たつもりのもう1つの「直系社会」である日本は、どうするのか。ドイツと同様に、日本の上層部は、“主人”である米国のあまりに攻撃的で不規則で予測不可能で狂気じみた言動に直面している。

(略)