「オオカミみたいな女優、怖い人です」
役者としての信条を問われれば、「相手のセリフをちゃんと聞くことと、現場の空気を読むこと」と答える(映画.com 2017年10月23日)。目の前にある小さなニュアンスを拾い、脚本に書かれているセリフを口にしつつ、本来聞こえないはずの腹の探り合いの会話を同時進行で行うため、セリフと同時にお互いが隠している本音が飛び交うことになる。
『ロマンスドール』(20年)で共演した高橋一生は、「よく芝居はキャッチボールと言われるんですが、蒼井さんとの芝居はジャグリングみたい」と表現する(映画.com 2019年12月18日)。
『宮本から君へ』(19年)をはじめ、多くの作品で共演した池松壮亮は、蒼井を「オオカミみたいな女優」と表現する。「気を抜いているとすぐ食べられちゃう。怖い人です」(映画.com 2019年9月24日)。
涙についても、「涙が出るかどうかが問題なんじゃなくて、心が泣いてるかどうか」という、ある監督の言葉を大切にしているという。涙という結果を求めるのではなく、そこに至る感情をたどり、その人間と向き合う。だからこそ『Tシャツが乾くまで』でも、「悲しい」「うれしい」などの単純な感情では割り切れない何かが画面のこちらにも伝わるのだろう。
大胆な濡れ場も「パパッと…」
蒼井は同世代の女優たちと比べても、かなり大胆な濡れ場や性的な場面を数多く演じてきている。
前出の『彼女がその名を知らない鳥たち』では、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊とそれぞれ異なるラブシーンを演じた。『宮本から君へ』では、池松とシックスナインをはじめさまざまな体位を見せる濡れ場を演じたほか、一ノ瀬ワタル演じる巨漢の男に強姦される場面もある。『ロマンスドール』ではラブドール職人役の高橋と性交を重ね、高橋は蒼井そっくりのラブドールを作り上げる。
本人は「30代近くなってからこういうシーンをやらせていただくことも増えてきましたね」とあっけらかんと語る(映画.com 2017年11月11日)。性的な場面は人間臭さを表現するための一つの手段であると考える蒼井は、「そういうシーンがあるからうーん……ということはないですね」(同前)と意に介さない。
『彼女が〜』で共演した阿部サダヲは、蒼井が自分以上に堂々としていて、「とにかく迷われない方なので、パパッとやりましょう、みたいな雰囲気で進んで行きました。おかげでとても助かりました」と振り返っている(otocoto 2017年10月26日)。

