「ダサい女優にはなるな」

 現場を大切にする。性的な場面も臆さず演じる。そんな蒼井のポリシーは、ある言葉に集約される。それは10代の頃に聞いたもので、ことあるごとにインタビューなどで語っている。

「ある先輩俳優から言われたのが、『自分の仕事は何か? と聞かれて“表現者だ”なんて言うようなダサい女優にはなるな。みんな表現者だと勘違いしているけど、私たちはあくまで労働者だから』ということ」(シネマカフェ 2014年6月12日)

 学生だった当時は、意味は理解できても実感できなかった。ところが仕事を続けるほど、その言葉の重さがわかってきたという。

ドラマ『Tシャツが乾くまで』脚本の生方美久は“好きな俳優”に蒼井優の名前を挙げてきたという(ドラマ公式Xより)

 自分を表現することが目的になれば、自分の思い通りにならないときに頑張れなくなる。しかし映画は一人で作るものではない。監督も撮影も照明も美術も衣装も、一つの作品を作るために働いている。俳優だってそうだ。特別な「女優さん」扱いは苦手で、自分は「俳優部」の一人という意識が強い。だから、作品の中で与えられた役をこなしていく。感情や性格も、役を演じるために利用する手段の一つ。自分たちのためでなく、観客のために良い作品を作るプロだと考えている。

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「私たちも“役者”という名のスタッフですからね」(Deview 2017年12月25日)

恋愛、結婚、プライベート、そして大切なもの

 何人もの共演者と恋に落ちて「魔性の女」と報じられたこともあったが、2019年に南海キャンディーズの山里亮太と結婚。2022年には出産した。

2019年の結婚会見での山里亮太(当時42歳)、蒼井優(当時33歳)。 ©時事通信社

 もともと多趣味で、宝塚、かき氷、日本文学、アイドル、相撲、刺繍などに熱中していたが、今ではもっぱら子育てに没頭しているという。かつてはプライベートと仕事の時間が同じ時間ずつあるのが理想と語っていたが、映画の撮影になると24時間を仕事に費やすこともあった。子育ては他人に任せきりというわけにはいかない。今はちょうどいい按配(あんばい)で仕事をしていることになる。

 プライベートと仕事、両方があって自分が成立すると蒼井は語る。

「この世界では自分を見失って狂ってしまうのも簡単。私は私でいたいから、両足はつっこまない。片足がちょうどいい」(女子ツク! 2016年9月7日)

 大事にしているのは仕事の現場であり、プライベートであり、人間性だ。

「この世界に長くいればいるほど、結局人間性なんだなってことが。演技力よりも人間性を磨いていかなければ長く続けられないんだな。だからここ(胸)がちゃんと満たされた状態を、なるべく作れるように」(NHK Eテレ『SWITCHインタビュー 達人達』2018年5月12日)

 こう“恩師”の山田洋次監督に語った蒼井。今、いい芝居を見せてくれているのは、胸が満たされた状態だからなのかもしれない。

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