同社に取材を申し込むと、「警察の捜査中なので応じられない。事件については、深くお詫びする」と返事があった。
私は各方面への取材を重ねた。
チラシ配布と住居購入、2つの手口
関係者へのインタビューと独自に入手した資料から、東大阪の施工会社は、別の施工会社や市場調査会社、建築士事務所などとグループ(以下、東大阪グループ)を形成していることがわかってきた。主に2つのルートで管理組合にもぐり込んでいる。
まず、グループ内の市場調査会社が、そろそろ大規模修繕の検討が始まると目星をつけたマンションに「内部調査に協力してくれれば、月1万5000円の謝礼を渡します。アルバイトをしませんか」といった内容のチラシを撒き、住民に網をかける。チラシを見て応募した住民に調査会社の社員が接触し、大規模修繕の情報を吸い上げ、潜入担当者がその住民の親族(夫や息子など)に扮して管理組合の修繕委員会に加わる。これを「チラシ・ルート」と呼ぶことにしよう。
白昼の逮捕劇がくり広げられたマンションの現場から逃走した男は、このチラシ・ルートから潜入していた。
同マンションに「ミステリーショッパー(覆面調査)のアルバイトをしませんか」と誘うチラシが配布されたのは、2024年3月だった。覆面調査とは、調査員が一般客を装って店を訪れ、接客態度などを店側に気づかれないように調べることをさす。
学生時代に覆面調査をした経験のある女性の居住者が、月1万5000円の小遣いほしさに応募した。すると調査会社の社員がコンタクトを取ってきた。当初、飲食店を対象とする調査の話だったが、途中で風向きが変わる。相手は修繕委員会に居住者の代理で参加したい、と言いだしたのだ。
修繕委員会にもぐりこむまでの一部始終
調査会社の社員は、代理参加の理由を、次のように語ったという。
「このマンションの管理会社の幹部からうちの社員を含めて、修繕委員会で不正がおこなわれていないか調べてほしいと依頼されています。その調査のために代理参加させてほしいのです」
「こんなに大きなマンションの大規模修繕工事を知る機会はそうそうない。ぜひ、他のマンションの参考にしたい」