不正を防ぐと聞かされた女性居住者は、マンションのためになると信じ、潜入者の指示どおり、管理組合の理事会に修繕委員の公募を求める投書をする。委員の公募が始まると、女性は夫の名前で応募した。こうしてお膳立てが整えられ、夫になりすました男が、修繕委員会にもぐり込んだのである。

このチラシ・ルートの男は、一級建築士と自称し、“専門家”っぽく振る舞い、修繕委員会の議事を仕切るようになる。

「区分所有者の息子」と称する男も潜入

チラシ配布と並行して、もう一つのルートからも、「区分所有者の息子」と称する男が修繕委員会に潜入していた。こちらは、マンションの住戸を買って入るルートだ。

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狙ったマンションの住戸を東大阪グループの会社が購入し、社員が区分所有者として理事会や修繕委員会に加わり、議事を誘導。大規模修繕に参加できるように動く手口である。

一見、区分所有者なので法的な問題はなさそうだが、自分たちの利益のために大規模修繕を受注すれば、多数の住民の利益に反した背任的行為の誹(そし)りを受ける。策謀が発覚すれば、「マンションを食いものにするな」と住民に反発されるのは言うまでもない。

逮捕劇のあったマンションの住戸を買ったのは、過去に東大阪の施工会社と物件取引の実績がある大阪市のビルメンテナンス会社の社長だった。潜入男は、その社長の息子だと嘘をつき、修繕委員会に参加していた。社長本人の協力がなくては不可能であろう。

東大阪グループは、多くのケースで、チラシ配布と住戸購入、二つのルートを同時並行で使ってもぐり込み、大規模修繕工事への参入を企てているとみられた。

「他人任せ」のツケ

なぜ、これほど手の込んだ、マンション版の「地面師(地主になりすました不動産詐欺師)」のような策謀をめぐらせるのだろうか。

それは、策を弄して、多少しくじっても、十分に元がとれるからだ。

多棟型のマンションやタワーマンションの大規模修繕の工事費は、数億円から数十億円にも上る。その下請けに入って「中抜き」したり、本書で触れた談合の構図で「リベート」を取ったりすれば、大きな利益を得られるのだ。