「今まで見たことのない状態に」――水上恒司が全身全霊で挑んだ“夛田”という劇薬

 本作でマスコミ試写段階から早くも大波紋を呼んでいるのが、水上演じる主人公・夛田(ただ)の尋常じゃない狂気っぷりだ。

 商業映画デビュー作で主役級の豪華キャストを引き寄せた武井監督は、「これまで水上さんの作品を何本も拝見してきましたが、今までに見たことのない状態になっている」と語る。

 劇中で夛田のボルテージが一段階跳ね上がる瞬間については、水上自ら演出のアイデアを出したという。水上自身も「狂っているように見せようと意気込むほど空回りしてしまう。そこだけは避けたかった」と語り、“狂気を見せる”のではなく監督と緊密に連携し計算して役を作り上げるギリギリのバランスで演じきったことを明かした。

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 その圧倒的な芝居には共演陣も恐怖すら覚えた様子。相手役を演じた黒木は「会話しているのが夛田さん本人なのか役のキャラクターなのか内心で推理していた」と語り、小池も「自分のペースに持ち込めず、飲み込まれていく感覚が演じながら快感でした」と絶賛した。

「もうこんな役やりたくない(笑)」佐々木蔵之介が演じるパワー型演出家の惨状

 劇中でパワハラ気質の舞台演出家・加藤を演じた佐々木は、自身の役柄を「勘違いした男ですね」と一言で一蹴。

「もうこんな役はやりたくない」と苦笑いしつつも、「演じている自分を客観的に見ると、一周回って笑ってしまった。お客様にも同じように笑っていただけたら」と振り返る。黒木から「チャーミングさが一切見えなかったのが最高に魅力的でした」と称賛されると、会場にはこの日一番の笑いが巻き起こった。

 また、後半の和気藹々としたフリップ企画では、極寒の埼玉ロケで受け取った「竹とんぼと勾玉」のエピソード(黒木)や、佐々木が実家の佐々木酒造から持参した「日本酒」を振る舞った裏話(小池)なども明かされ、過酷かつ異常な劇中とは対照的なチームワークの良さがうかがえた。