わずか8世帯14人が暮らす山間の限界集落で起きた連続殺人事件。帰郷後は農作業を手伝うなど意欲的だったある住民の男は、次第に村八分のような状態へと追い込まれていく。

 そして2013年7月、一夜にして5人を殺害する惨事へと発展した。「現代の八つ墓村」とも称された現場で何があったのか……ノンフィクション作家の八木澤高明氏の文庫新刊『殺め家』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)

犯人の保見光成が暮らしていた家(撮影:八木澤高明)

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「現代の八つ墓村」限界集落で起きた殺人事件

 現場は8世帯14人が暮らす山間の限界集落だった。

 犯人の保見光成は、中学卒業後に故郷を離れ、神奈川県川崎市内で左官業を営んでいた。川崎で暮らしていた当時は、麻雀が好きで、牌の中から取って、本名の光成ではなくて、中と名乗っていたという。ひと付き合いも悪くなく、気さくな性格であったという。

 事件を起こす15年前に故郷である周南市金峰に両親の介護をするために戻ってきた。44歳で村へと帰って来た保見は、当初村の集まりにも顔を出し、高齢者が多い村の中で農作業を手伝い、村おこしも企画するなど、積極的に村人たちと関わっていたという。ところが、両親が亡くなった頃を境にして、次第に村人たちとの間にトラブルを抱えるようになっていった。

 集落の中で孤立感を深めていき、ほとんど村八分のような状態になった保見は、2013年7月21日午後9時、自宅から西へ50メートルほどメートルほど離れた貞森さん宅から火をつけ、貞森誠さん(71歳)と喜代子さん(72歳)を殺害する。時を同じくして、自宅の隣りに暮らしていた山本ミヤ子さん宅にも侵入し、殺害後火をつけた。

 その翌日には、自宅の目の前を流れる川の対岸にある石村さん、河村さん宅へ向かい、河村聡子さん(73歳)、石村文人さん(80歳)を殺害した。5人を鈍器のようなもので、頭部を殴り殺害したのだった。