「嫁さんが殺されたんだよ」

 こんにちはと挨拶をして、話のきっかけに唐辛子を収穫しているんですかと声をかけると、せせらぎの音に消え入りそうな声で言ったのだった。

 それこそ、何百人と私のような取材者が訪ねてきて、男は私が何者かとっくに気がついているだろうが、私は取材に来たと告げ、保見についてどう思うのか尋ねてみた。

「もうええじゃろ、何も話すことはないんだよ」

ADVERTISEMENT

 事件のことに触れると、ますます小さな声で言った。それでもしつこく食い下がっていると、ぽつりと洩らした。

「嫁さんが殺されたんだよ」

次の記事に続く 「ろくな人間じゃなかった」米を盗み、近隣住民とトラブルも…《住民の3分の1が殺された村》で聞いた「犯人一家のほんとうの評判」(平成25年の事件)