実際、告示日の演説を見たら面白かった。下地氏の撤退で有利になったように見えた古謝陣営は、下地氏への直接の言及はなく、支持者に対し「ここ2、3日の政局」に落ち着いて対応するよう呼びかけていた。一方、玉城陣営の選対本部長が口にしたのは「ウチナーのことはウチナーが決める」だった。 

今回の知事選では、これまでとは少し違う風景が

 とはいえ、古謝氏の陣営が盤石に見えたのも確かだ。下地氏の撤退で、少なくとも保守系候補が競合する構図は解消された。古謝氏自身も42歳と若い。演説を聞いた印象でも4年前より強そうな候補だな、と感じた。

 そして今回の知事選では、これまでとは少し違う風景があった。

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 告示翌日の読売新聞の見出しは「沖縄 経済に争点シフト」。朝日新聞も「辺野古移設」が争点として目立っていないと報じた。

 古謝氏は辺野古移設を容認しているが、告示日の第一声では触れず、陣営幹部は「辺野古はもう争点じゃない。それよりも経済政策を訴えることが大事」と語った(朝日新聞)。

 一方、移設反対の玉城氏も、七つの政策の柱の大項目には「辺野古」を入れなかった。ただ、告示日の演説では「絶対反対」と訴えている(同)。これまで沖縄の知事選で大きな争点であり続けた基地問題。その位置づけが変わりつつあったのだろうか。

 毎日新聞の記事に興味深い指摘があった。沖縄は建設業の比重が全国より大きく、公共事業に影響力を持つ保守系政治家が支持を集めやすい土壌があるという。

 そうした状況がある中で、沖縄国際大学の前泊博盛教授は、「なぜ沖縄だけが重い基地負担を背負わなければならないのか」という県民の疑問が保守勢力の伸長に歯止めをかけてきたと分析する。つまり基地問題の存在感が薄まれば、その分、保守勢力が伸びやすくなるという見立てだ。

 ここで素朴な疑問が浮かぶ。そもそも「基地か経済か」という二択なのだろうか。政府は基地問題と振興予算の「リンク」を否定する。だが沖縄では長年、基地政策への協力と経済支援が結びついて見える政治が繰り返されてきた。辺野古をめぐって政府と県の対立が続くなか、沖縄振興予算が減り、「アメとムチではないか」と批判されてきた経緯もある。

 今回、私は4年前の知事選を取材したときに聞いた、ある言葉を思い出した。