薬物入りの飲み物を渡して…

 モーテルに入ると、キム被告はあらかじめ用意していた薬物入りの飲み物を男性たちに渡した。そして男性が意識を失うと、そのまま放置して現場を立ち去った。通報や救助を求めることなく、被害者が料金を支払ったデリバリーの料理まで持ち出してモーテルを後にしたことが明らかになり、世間に衝撃を与えた。

 検察によると、キム被告の犯行による被害者は計6人に上る。犯行の動機は複雑で、今も明確に説明されていない。被害者に宿泊費やデリバリーの費用などを負担させていたことなどから、財産に対する欲求が犯行の主な要因の一つだったと検察は判断した。

被告は「サイコパス」

 これに加え、男性に対する過度な警戒心や、他人の被害に共感できない傾向などが複合的に作用したとみている。また、捜査過程で実施されたサイコパス診断検査でも、サイコパスの範疇に該当すると評価されたと伝えられている。

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 検察がキム被告の一連の犯行に明確な殺意があったと判断した重要な根拠は、最初の犯行後の行動だった。

 1人目の被害者は、薬物入りの飲み物を飲んで意識を失ったものの命に別状はなかった。すると、キム被告は生成AIに対し、薬物と酒を一緒に摂取した場合にどのような危険が生じるのかなどを繰り返し質問した。

chatGPTを使って薬物について調べていた ©AFLO

 AIから死亡に至る可能性があるとの趣旨の回答を得た後も、犯行をやめなかった。それどころか、その後の犯行では最初の犯行時より薬物の量を2倍以上に増やしていたことが捜査で判明している。そして最終的に別の被害者は死亡してしまったのだ。

韓国で広がった「殺人レシピ」

 キム被告が犯行に使用した薬物を入手した経緯も、計画性をうかがわせるものだった。検察によると、キム被告はPTSD(心的外傷後ストレス障害)があるように装って精神科から処方薬を入手し、犯行のためにあらかじめ準備していた。死亡した被害者の司法解剖では8種類の薬物が検出され、投与された薬物は少なくとも50錠に相当する量だったとされる。「被害者を眠らせようとしただけだ」というキム被告の主張とは、大きな矛盾があった。

 この事件は韓国社会で大きな注目を集めた。ある調査報道番組が、犯行に使われた薬物について具体的な情報まで取り上げたことで、「殺人レシピ」という言葉が広まった。その後、SNSには「殺人レシピ」をはじめ公表された情報を組み合わせて犯行手口を整理した投稿まで登場。さらに、似た手口で男性に薬物を使って金品を奪う事件まで発生し、模倣犯罪の可能性も指摘された。