犯行後には日本旅行も…

 さらにこの事件の奇妙なところは、キム被告の犯行後の行動だった。キム被告は2人の男性が死亡した後も平然と日常生活を続け、裁判所に提出した自筆の答弁書によると、2月初めには姉とともに日本への旅行さえしていた。

 また、「自身の個人情報が公開されたことで夢が壊れた」と訴える一方で、「刑期を終えた後は母親から仕事を教わり、配達の仕事をしながら暮らす」という将来の計画まで記していた。

 こうしたキム被告に対し、検察は死刑を求刑した。2人の被害者が死亡し、犯行が事前に計画され、最初の犯行後に薬物の危険性を確認したにもかかわらず犯行を繰り返したことなどを考慮すれば、最も重い刑罰が妥当だと主張した。検察はまた、キム被告が犯行について真摯に反省する態度も見せていないと指摘した。

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一審は無期懲役の判決

 しかし、一審裁判所はキム被告に死刑ではなく無期懲役を言い渡した。裁判所は、「過去のトラウマから男性との身体的接触が怖く、しばらく眠らせようとした」というキム被告の主張を認めなかった。

 一方で、当初から被害者を殺害する明確な意図を持っていたと断定するのは難しいと判断した。ただし、犯行を繰り返す過程で薬物の危険性と被害者が死亡する可能性を認識しながら犯行を続けたとして、「未必の故意」による殺人を認定した。

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 そのうえで、幼少期に父親から繰り返し家庭内暴力を受けていたことなど、不遇な家庭環境や社会的孤立、知的能力の低さなども考慮し、無期懲役を言い渡すとした。「死刑は人間の生命を永久に奪う究極の刑罰であるため、特別な事情がある場合に限って例外的に言い渡すべきだ」というのが裁判所の判断だった。なお、一審判決には双方が不服を申し立てており、今後、控訴審が行われる予定だ。

死刑求刑→無期懲役となった例

 検察が死刑を求刑したにもかかわらず、韓国の裁判所が無期懲役を言い渡すケースは、この「モーテル殺人事件」だけではない。2023年、釜山で当時23歳のチョン・ユジョンが同年代の女子大学生を殺害し、遺体を切断して遺棄した事件でも、検察は死刑を求刑したが、最終的に無期懲役が確定した。

 同年、ソウル・新林洞(シンリムドン)で通行人1人を殺害し、3人を殺害しようとしたチョ・ソン(当時33歳)、死者2人を含む計14人の死傷者を出した京畿道(キョンギド)盆唐(プンダン)の無差別襲撃事件の犯人チェ・ウォンジョン(当時22歳)も、検察が死刑を求刑したにもかかわらず、無期懲役が確定した。