演劇界の鬼才・松尾スズキさん。最新刊『物件漂流記』は13回の引っ越しを経て夢の一軒家に住むまでの松尾流「家の履歴書」。対談前に本を読んだアガワはある疑問を抱いていた。これって『物件女漂流記』ですよね!?
(まつおすずき 1962年、福岡県生れ。劇団「大人計画」主宰。Bunkamura顧問演出家。88年に大人計画を旗揚げ、阿部サダヲ・宮藤官九郎らを見出す。2020年に『命、ギガ長ス』で第71回読売文学賞戯曲・シナリオ賞、26年に第51回「菊田一夫演劇賞」受賞。京都芸術大学舞台芸術研究センター教授、コクーン アクターズ スタジオ学長、九州産業大学芸術学部客員教授を務め、後進育成にも注力。小説『クワイエットルームにようこそ』『もう「はい」としか言えない』など著書多数。最新刊は『物件漂流記』。)
余韻が人間関係にあってもいいんじゃないかな
阿川 初めまして……ですかね?
松尾 年を取らないと、ゲストに呼んでもらえないと思っていました。
阿川 そんな慣習はないです(笑)。私、松尾さんが近松門左衛門を演じられた『ちかえもん』(NHKドラマ、2016年)が好きでした。あのドラマの共演がきっかけで青木崇高さんと優香ちゃんが結婚したじゃないですか。優香ちゃんとはご飯を食べたりする仲だったから、結婚披露パーティに呼ばれたんですけど、ひょっとしたら松尾さんも……?
松尾 僕もいましたよ。
阿川 やっぱり! 私もこうやって表に出る仕事をしているくせに、大勢いるパーティはどうも苦手で。知り合いに会っても、なんだか落ち着かなくて失礼なことになっちゃったりして。
松尾 よく分かります。僕なんか、人見知りなんで。
阿川 「人見知り」と言い出したら、だいたいの人に当てはまりますよ。
松尾 パーティもですけど、テレビ番組の収録前に、スタジオの前室に出演者たちで集まったときの、何気ない会話も苦手なんですよ。
阿川 ゲスト出演だとアウェイですからね。私は、収録中あんなにニコニコしていたMCが、終わった途端、笑顔を消してすぐスタジオから去っていくのが寂しくてねぇ。
松尾 終わったあとの軽い感想会的なひと時が欲しいですよね。余韻が人間関係にあってもいいんじゃないかなと思います。僕はこの対談が終わってもスッとは帰りません。
阿川 ホント? そんな自称・人見知りで劇団「大人計画」を主宰する松尾さんですが、この度お書きになったエッセイが『物件漂流記』(文藝春秋)。風邪をこじらせているときに読んだものだから、あまりに可笑しくて咳が止まらなくて苦しかったあ。失礼ながら、お母さまのお葬式で葬儀スタッフが炭坑節を歌う話とか、最高でした。これは売れますな。
松尾 ありがとうございます。
