一本に絞るなら絶対に…
監督としてリーグ制覇5回、日本一3回。いち早くデータ重視のID野球を取り入れるとともに「野村再生工場」と称されるほど選手育成に長けた名将をして「これだけの結果を出しているからには、やはり二刀流で使いたくなる」と言わしめる大谷。それでも仮にどちらか一方に絞るとしたら「絶対ピッチャー」だと野村は断言する。
「やはり野球はピッチャーだからね。0点で抑えれば100パーセント負けはないし、10点取っても11点取られれば負ける。だから、やはり野球はピッチャーですよ。ピッチャーは自分がボールを持っているから好きなところへ好きな球を投げられる。それに対して打者は受け身だからね。攻めの投手と受け身の打者、そのどちらが向いているかは、大谷自身の性格も関係してくるんだろうけども。
ピッチャーに専念すればもっとすごいレベルまでいけるかもしれないし、バッターとして出場することが投手・大谷の邪魔になるのかもしれないけど、実際に二刀流の影響がどこまであるのかは大谷本人にしかわからない。我々の時代には、いくら投打ともに才能があっても打者には“あとから転向すればいい”というのが常識だったけど、今の時代はそれが通用しなくなったということなのかもしれないしね。
ソフトバンクの柳田(悠岐)なんかにしたって、あんなアッパースイング……実際にスローで見るとインパクトの瞬間にはレベルスイングになっているようなんだけど、ダウンスイングで鳴らした王がよくあれを許しているよなあ。大谷の二刀流と一緒で、我々の常識からは外れていても、結果が出ているから認めざるを得ないということなのかな。すごい時代になったもんだよ。
あと、今は160キロの球を投げたとかそういうことが話題になっているようだけど、スピードを追求することについてはあまり感心しない。これも俺の持論だけど、ピッチャーはスピードよりもコントロールだよ。長い間キャッチャーをやってきてそう思う。
150キロのど真ん中と、130キロの外角低めとではやっぱり150キロのど真ん中のほうが打たれるのが野球なんだから。コントロールをよくするためには投げ込みも必要だろうけど、それよりも投げ方ですよ。バランスのいいフォームで投げることが大事。じゃあ大谷はどうかといえば、通用しているんだからいいんじゃないの?」