重要なのは「いい声かどうか」ではない

――若手の技量的にはどうなんですか。『声優魂』では、その点についてのダメ出しも書かれていました。

大塚 昔の声優がうまかったかというと、決してうまいわけではなかった。でも、面白いんですよ。今の子は、うまい子は本当にうまいし、反対にうまくない子は芝居になってないです。この先、どんどんAIが進んでいく世の中で、芝居がうまくない子は生き残っていけなくなるんじゃないかな。その“うまい”が何を表すのかが、また難しいんですが。

――ライターの仕事でも共通する部分はあります。AIで文章は書けてしまう。ただ、“うまい”はその先にある、魂の部分にあるものだと考えています。一方で、“うまい”かそうでないかの差は小さく、その差が分かる人がどんどん減っていることに恐ろしさを感じています。

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大塚 おっしゃる通りだと思います。声優でも、“いい声かどうか”だけで聞いてる人が、オーディエンス側にどんどん増えてきているのかもしれません。その中で、僕はやっぱり声じゃなくて、その時の芝居、その時のセリフが、オーディエンスの胸に「ブスッ」とぶっ刺さるか、刺さらないかというところを大事にしていきたいと思っています。

©三宅史郎/文藝春秋

――下の世代でも、その辺りを意識していらっしゃる方はいるのでしょうか。そして、そういう方が成功していっているものなのでしょうか。

大塚 まぎれもなくいます。けれど、それで成功するかは分からないです。当たる、当たらないは本当に運だと思うけれど、生き残っていけるか、それとも消えるかは運じゃないような気がします。ライターもそうじゃないですか?

 AIがどんどん進化すればするほど、技術はAIの方がうまくなるに決まっている。じゃあ、AIに作れないものは何なのかというところを向いていることが、生き残るためには一番大事なことだと感じています。

――すごく胸に染みます。大塚さんは、若手が出演するアニメをよく見ていらっしゃって、「あそこが良かったね」と伝えるそうですね。

大塚 見ますね。リサーチでもあるし、やっぱり面白い作品は面白いんですよ。自分が出ていなくても、面白いものは面白い。

 僕はロードムービーが好きで、『葬送のフリーレン』とかもそういう作りじゃないですか? 日常の域を基本的に出ない。淡々としたリズムで流れていく。だから、声優も大げさな芝居はしない。その中で時々、日常じゃないことが起きる。そのさじ加減が絶妙で好きなんですよね。一番好きなアニメは『夏目友人帳』なんですが、そこは通じるところがあります。