大ベテランだからこそ「バカジジイ」として現場を和ませる

――変な芝居でいえば、怒られるのが怖いから、80点を取りにいっているところもあるのかもしれないですね。

大塚 最初は0点でもいいじゃないかと思うんですけど、無理をする人はやっぱり減っていて、リテイクがない方が正義という感じになっています。「何言ってんだかな。一発目はかませばいいのに」と思うんですけど。

――そこは歯がゆいところでもあるんですね。

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大塚 もちろん、それはあります。けれど、いくら自分が一生懸命泳いだところで、川の流れは変わらないじゃないですか。それよりも、その大きな川が滞りなく流れるように注力した方が、作品のためにはなるのかなと考えています。

 もう若い頃とはポジションが全然変わってしまったので、僕が尖っていたら、スタジオ中がピリピリしちゃうんですよ(笑)。なので、「ほら、こんなにバカジジイなんだよ。こんなに楽しいよ」という空気感を出すように、いつもやっていますね。「大塚さんをキャストに入れておけば、現場は回ってくれるよね」というふうになればいいのかなって思ってます。

©三宅史郎/文藝春秋

――以前のインタビューで「アニメを文化として次の世代にバトンを渡せるのか怖い」とお話しになっていましたが、今もそう思っていらっしゃいますか。

大塚 うーん、そうですね。もう職人の時代でもなくなってきているのかもしれない。ただ、職人がいなくなっちゃうと「ものづくり日本」としては弱くなっちゃうよなとは思います。

 やっぱり声優は職人だと思うんですよ。アニメをやったり、吹き替えをやったり。職人芸は、一部でもいいから、ちゃんと保っていかないといけない。伝統の職人芸があるべきだなとは思います。

 タレント活動についてはそれぞれの自由なんですけれど、その中で、伝統を絶やしてはいけないと考えるグループがあればいいなとは思います。僕はそこを守っていきたいです。

――職人芸は、なかなか教えられるものでもないように思います。

大塚 先輩の仕事を見て「ああなりたい」と芸を盗んで、コツコツと身につけていく構図が一番望ましいです。教えられてできる部分って、やっぱりどこかで頭打ちが来ますから。その先の領域って、本人のセンスなんです。

 そのセンスに関しては教えられないので、センスのある人が後ろにいてくれるといいなっていう。だから、もう祈るしかないですよね。

©三宅史郎/文藝春秋
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