巨大企業グループを築いた男が死んだ。真面目に事業を育て、成功した後は潔く経営の第一線を退き、社会貢献に力を注いでいた。どう見ても、悪人ではない。

 それなのに、なぜ彼の死に疑義が生じたのか。

 一作ごとに異なる事件を描く〈セレブ・ケース〉。10月9日に刊行された第2作『死と金』で、特別対策捜査官・二階堂悠真が向き合うのは、“「完璧な死」は買えるのか?”という問いだ。堂場瞬一さんに聞くと、その謎の奥から、一人の成功者の生き方が見えてきた。(全2回の第2回/第1回を読む)

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『死と金 セレブ・ケース2』(文藝春秋、10月9日発売)

第1作とは「全然違う金持ち」にしたかった

――『死と金』では、第1作『闇をわたる』とはずいぶん違うタイプの人物を描いていますね。

堂場 『闇をわたる』のほうは、まず「わかりやすいお金持ち」にしたかったんですよね。ちょっと周りから「あの人、お金持ちだけど本当はどんな人なんだろう」と思われるようにして、読者が興味を持ちそうなお金持ち、でやりたかった。

 それをやったので、第2弾の『死と金』からは、「お金持ちにもそれぞれ事情がありますよ」というところを徐々に出していこうと思いました。

 同じ経済人、お金を儲けた人という意味では『闇をわたる』と同じなんですが、人生のあり方が全然違う人をやってみた、ということです。

日本の金持ちは「見せない」

――そもそも「日本のお金持ち」を小説にする難しさはありますか。

堂場 日本人って、お金を稼いだからといって見せびらかすような人はあまりいないような気がするんですよね。

 どこかに恥の感覚があって、あまり自分がお金を持っていることを見せびらかさない。寄付をしても、あまり言わないとか。

 だから、そこをいかに日本のセレブっぽくするのか、しないのか。これからいろいろ試してやっていこうと思っています。

堂場瞬一さん ©文藝春秋