「睡眠時間が取れない時は髪を洗わずにシャワーだけ浴びて寝るような日も…」

――睡眠時間は確保できていましたか?

田中 忙しい時は4時間睡眠だったのですが、私はそれだと2日が限界なので、自分でコントロールして4時間、4時間と続いたら次の日は6時間、それでまた次の日は4時間……というサイクルになるように工夫していました。

 睡眠時間が取れない時は髪を洗わずにシャワーだけ浴びて寝るような日もありました。

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――当時、何か趣味や心の支えなどはありましたか。

田中 趣味は、あまりにも余裕がなさすぎて無理でしたね。でも先輩の中には、仕事が終わって深夜2時からジムに体を鍛えに行く人や、忙しい合間を縫って英語教室に通う人もいて。やっぱり、そういう野心的でエネルギーがある人が昇進していきますね。

 私は土日も2週に一度は働いていましたが、それ以外の休日は、寝て過ごしていました。

田中優輝さんの外銀時代。徹夜明けで昼ごはんより先にまぶたが落ちた(本人提供)

いつクビになるかわからない“太く短い”会社員生活

――突然、会社をクビになる人もいるのだとか。

田中 1年目の社員は成長・投資段階なので対象にならないのですが、2、3年目以降はクビの対象になります。信頼されていた上司が突然いなくなったこともありました。

 本社のニューヨークからヘッドカウントを減らす指示などが入ると、いつ肩を叩かれるかとみんなビクビクしていましたね。

 上司からも、「みんないつクビになるかわからないから、この業界にいるなら太く短く、できるだけ“今”を最大化しよう」と言われたことがあるんです。だから高い車や時計、スーツを買っている人も多かったし、案件が終わると六本木の高級ステーキ店にみんなで食べに行ったりしていました。

 刹那的な感じですが、みんな必死で、青春のようでもありましたね。

証券取引所で研修を受ける田中優輝さん(本人提供)

――そういった過酷な環境で、仕事を続けられるか不安になることはありましたか。

田中 「向いていないな」と思うことはありましたね。インターンで入った小さい化粧品会社では、自分で頭を使って、生産性のある、会社にとってプラスになる仕事ができていたんです。

 でも、投資銀行に入社してからは本当にそれができなくなってしまった。忙しすぎて、言われたこと、振られた仕事をAIのように片付ける、ということしかできなくなったんです。忙しいなか「振られたからやる」という感じなので、何のためにこの作業をやっているのかを聞く余裕もありませんでした。

 この仕事が向いている、昇進できる人というのは、そういう過酷な環境でも自分の立ち位置をしっかり理解して、上司に対してでも「もっと案件を良くするために、こうした方がいいんじゃないですか」というような提案ができる人なんです。

 私にはその能力があったはずなのにできなかったので、「自分はここまでなのかな、どうしてできなくなっちゃうんだろう」という挫折感があって。長い労働時間が続く中で、肉体的疲労と精神的疲労も重なり、しんどい気持ちになりましたね。