「久しぶりにこんなに笑ったな」会社に退職を伝えようと決意した“きっかけ”

――会社に退職を伝えようと決意したきっかけは何かあったのでしょうか。

田中 仲の良い同期たちとたまたま休日が重なって、5人くらいで箱根旅行に行ったんです。それがすごく楽しくて「久しぶりにこんなに笑ったな」と思ったと同時に、「これで思い残すことなく辞められるな」とも思いました。日曜日に箱根から帰ってきて、月曜日に上司に「辞めます」と伝えました。

――上司の方はどういった反応でしたか。

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田中 私がいつも元気なさそうにしていたこともあって、最初は「働きすぎだから、一度休職するという選択肢もあるよ」と言われたのですが、私が「起業するので」と言うとすぐに引き下がってくれました。

 辞めることが決まってからは、上司の方が食事に誘ってくれたり、「俺も将来やりたいことがあるんだ」というような身の上話をしてくれたりして、急にみんなが「人間」に見えてきたんです。

――家族には、退職することを伝えたのでしょうか。

田中 箱根旅行から帰ってきた日の夜に「明日辞める」と伝えたのですが、特に反対されることもなく「早かったね」という感じでした。

 これまで、大学受験も一人暮らしも、自分で決めたことは自分でやりたいようにやってきたので、両親も私を信頼してくれていたのだと思います。

 

「あ、色々な生き方があるんだな」と気付いた瞬間

――最後の出勤を終えた瞬間は、どういう気分でしたか。

田中 めちゃくちゃすっきりしました。責任が全部なくなって「何者でもなくなる瞬間」はすごく気が楽になりましたし、退職をしてから一瞬で元気が戻りました。

 色々なものが綺麗に見えたと言いますか、何もかもが新鮮に思えました。お昼に散歩して、久しぶりに日差しを浴びて、スーパーで主婦の方々が買い物している光景や公園で談笑している人たちを見て、当たり前のことなんですけど「あ、色々な生き方があるんだな」と気付いたんです。

 エクセルとパワーポイントしかない世界から解放されて、世界が広がったように見えました。

撮影=佐藤亘/文藝春秋

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