「日によっては18時間くらいやっていた」1日中ミシンに向き合う日々
――刺繍に関してはまったくの初心者だったそうですが、ブランドを立ち上げるにあたって最初に取り組んだことは何だったのでしょうか。
田中 最初にやったこととしては、プログラマーが1からプログラミングを学ぶ時のように、刺繍にまつわる書籍や文献を全部読んで勉強して、トライ&エラーをくり返す作業でした。
まずは商品化できるクオリティまで刺繍が上手くならなければいけなかったので、とにかく刺繍の技術習得から始めたという感じです。
――技術習得には、どれくらいの時間がかかりましたか。
田中 4、5か月間は寝る間も惜しんでひたすらミシンに向き合っていました。当時一人暮らしをしていた4畳半の部屋には、ミシンを置いた机と自分の布団しかなくて、寝ている時間以外はずっとミシンを動かしていたので、1日に13~14時間、日によっては18時間くらいやっていたと思います。
「口座残高が2000円くらいに…」エアコンを付けず熱中症と戦った夏
――初期投資にもかなりお金がかかったのでは。
田中 ミシンは25万円くらいで、会社を立ち上げるのに40万円くらいかかりました。あとは、動画を撮るための新しいスマホを買うのに15万円、パソコンを15万円で買って、住民税を支払って、としているうちに、貯金はすぐになくなりましたね。
節約のために、夏場もエアコンはつけず、熱中症と戦いながら刺繍をしていて。本当に辛かったですね。
――他に、節約のためにしていたことはありますか。
田中 食事は基本的にブロッコリーを食べていましたね。あとは、自分に物欲があまりないのも関係しているんですが、起業してから服を1着も買っていなくて。ずっと自分のブランドである「北区の刺しゅう屋」の服を着ています。
あまりにもお金がなくて口座残高が2000円くらいになっていた時期もありましたが、1万2000円分あったPayPayのポイントで何とか食いつなぐことができました。
――どうしてそこまで熱心に取り組めたのでしょうか。
田中 一人きりで本当に辛い時期もあったんですけど、唯一の希望だったのが「これは今だけだ。近い将来、このブランドに賛同してくれる仲間が、一緒にホワイトボードの前で戦略を組んでくれるはずだ」と思えたことです。いつか誰かが来てくれると信じていたからこそ、頑張れましたね。




