「再生回数が100回も行かないこともあって…」絶望したけど心が折れなかったワケ
――実際にSNSでブランドの動画を発信し始めたのは、いつ頃からですか?
田中 会社を辞めたのが1月、起業してミシンを買ったのが2月の終わり。発信を始めたのは6月中旬でした。
――反響はどうでしたか。
田中 再生回数が100回も行かないこともあって、一旦、絶望したんです(笑)。ここで再生されてくれないと、全ての計画が崩れてしまうので……。
――心が折れそうになる瞬間もあったのでしょうか。
田中 それはなかったですね。動画もなかなか再生されないし、まだ1着も売れていない状況ではありましたが、「論理的・哲学的に改善を繰り返せば、資金が尽きるまでに絶対に上手くいく」と思っていたんです。
ただ、ずっと部屋に篭りきりでミシンを踏んでいると、ミシンの「ガタガタ」という音で耳が痛くなったり精神的に滅入りやすくなるので、毎朝2kmのランニングを日課にして元気を出すようにしていました。
――その後、「北区の刺しゅう屋」の動画がバズったそうですね。
田中 「帰りを待つわんこ」という作品がバズって、多くの方にブランドを知っていただく機会になりました。
私にはデザイナーの経験がまったくなくて、デザインに自信がなかったので、初期に自分一人でできることとして「ブランドストーリーで人の心を動かす」という一点突破の戦略を考えていました。
作品のデザインには、人気犬種の1位であるトイプードルを主役に持ってくることにして、「ではトイプードルがどんな行動をしていたら一番人の心が動くのか」を考えたんです。きっと、散歩やごはんの時ではなく「人が見ていない時の犬に思いを馳せる」のが、一番誰かの心に響くような気がしたんですね。
そこで思いついたのが「主人の帰りを待つシーン」でした。
「帰りを待つわんこ」の動画が500万回以上再生されて“大バズり”
――「帰りを待つわんこ」の動画は500万回以上再生されたそうですね。
田中 そうです。「帰りを待つわんこ」がブランドストーリーへの共感に繋がって、フォロワーが一気に増えました。トレンドブランドは簡単に忘れられてしまいますが、刺繍の温かさを発信したり、世界に打って出るという挑戦そのものを発信したりすることで、継続的にブランドを追ってくれるファンを増やすことができたんです。
もしもバズるのがあと2か月遅れていたら、おそらく資金が尽きてアウトだったと思います。
――初めて注文が入った時は、どんな気持ちでしたか。
田中 注文を知らせる音がスマホから初めて聞こえた時は、とにかく嬉しかったですね。東大に受かった時は「安心」という感じだったんですけど、今回は成功するか本当にわからなかったので、純粋に嬉しくて部屋の中でガッツポーズをしたり、スキップをしたりするほどでした。
自分で0から1を作った経験が初めてだったので、1枚売れたということは10枚売れるし、10枚売れれば100枚売れる、と感じて本当に嬉しかったです。




