約4か月半におよぶ抗がん剤治療を終え、2020年4月に退院が決定した元フジテレビアナウンサーの笠井信輔氏。しかし直前に緊急事態宣言が発出され、岡江久美子さんの悲報が届くなど自身の周囲は混乱状態だった。

 無菌室から出たばかりで免疫力の低下した身体でどのように笠井氏は過ごしていたのか。同氏の著書『生きる力』(角川新書)の一部を抜粋して紹介する。

「家族は『元気の源』です」

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退院決定! でもコロナが怖い

 4月、ついに退院の許可が出ました。

 ところが先生から「退院してもいいですよ」と告げられた日が、ブログにもインスタグラムにも「りんちゃん日誌(編集部注:(悪性リンパ腫の「りん」をとった入院記録。明るく前向きに過ごしたいと考え、軽い感じで行こうと「りんちゃん日誌」と名付けていた)」にも、どこにも記録されていません。

 あんなに待ち望んでいたのに、なぜなのか?

 実は、最後の抗がん剤投与中に「緊急事態宣言」が発出され日本中大騒ぎになり、家族の面会も禁止。「退院だ、やった~!」どころではなくなったのです。

「退院できそうだ」と家族や知人に話しても「良かったね~。おめでとう」などという雰囲気ではありません。

「今退院して大丈夫なのか?」

「もう少し入院させてもらったほうがいいのではないか?」

 もう、みんな異口同音に緊急事態宣言下での退院を心配するのでした。しかし、「コロナが心配なのでもう少しいさせてください」って、病院はホテルじゃないのですから。部屋の空きを待っている人もいるでしょうし、そうそう長居はできません。

 退院が4月30日と決まり、さらに、もう一つ重大な事実が告げられました。6回にわたる720時間の抗がん剤投与の結果、全身に散らばっていた私のがんが本当に消えたのか? それを判断するのは退院2週間後のPET検査だというのです。

 つまり、4月30日の退院はいわば“仮退院”。モヤっとしました。

「笠井さん退院おめでとう!」なんて、病院の正面玄関で花束もらったりして、先生方それに看護師さんたちに見送られて、

「長い間ありがとうございました」

 とか言って、それを「とくダネ!」の密着カメラが撮影している……。

 入院後期はそんなイメージトレーニングでモチベーションを上げてきたのに。全然違う。

 私にとって重要な退院日は、セレモニーなんて夢のまた夢、「一旦、家に帰る日」に過ぎなかったのです。しかも、緊急事態宣言中なので取材も禁止! 気持ちがなかなか上がりません。

 さらに、私たちがん患者にとって衝撃的なニュースが伝えられました。

 志村けんさんに続いて、女優の岡江久美子さんが4月23日新型コロナウイルス感染で亡くなったのです。