ついに身体からがんが消えた「完全寛解」を言い渡された笠井信輔氏。「やったー!」と大叫びしたいほどの歓喜に包まれた彼だったが、同席していた妻と長男のリアクションは意外なものだった。同氏の著書『生きる力』(角川新書)の一部を抜粋。家族のリアルな反応について紹介する。
◆◆◆
治療続行か寛解か、運命の日の大失敗
退院して20日が経ちました。
最新のPET検査の結果が出る日です。
この日の午前中に、ブログを更新しました。
■ブログ 5月21日
今日午後、「寛解」か「治療続行」かの診断がくだります。
ネットを見ると、有名な先生が「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は40%が二次治療に移ると発言していました。
私はそのうちの「予後の悪いタイプ」。さすがにドキドキしますよね。
ただ「信じてる」とか「絶対に大丈夫」とか、そういう事は今は自分では思わないようにしています。
先生方も私も家族も、全力でこの病気と向き合ってきました。
その結果なので、どのような診断結果にせよ素直にそれを受け入れて、次に歩を進めようと思っています。
その覚悟はできています。
「今日のことブログに書いたの?」
「うん」
「そうなんだあ」
妻は怪訝そうな表情でした。
なぜこのような予告ブログを書いたのか。
正直にその日の私の気持ちを述べると、「寛解」をいただく自信があったのです。根拠はありません。ただ、体の調子や、いままでの先生方の発言からそう信じていました。
ブログには、信じているとか「思わないようにしている」と書きました。
それは、信じていると「思ってしまっているので」思わないようにしているという意味なのです。なんだかわかりづらい釈明ですみません。
しかし、このブログが後になって問題になるのです。
「100点ではないけれど、90点以上」という診断
相変わらず、妻と長男に同行してもらって、先生の診察室に入りました。
「PETの結果です。微妙なんですよ。どうも腰のあたりに怪しい病変のようなものが確認できるんです。これが残ったがんなのかどうかの判断が極めて難しいんですね」
先生のお話は「画像解析の専門の先生にも相談してもう少し時間をかけて評価したい」、そして「100点ではないけれど、90点以上、家で仕事もしていいし、このまま自宅で過ごしてかまわない」というものでした。
つまり「寛解」の診断をいただけなかったのです。ショックでした。
ただ、次の段階の治療に進まなくて本当に良かった。最高のお返事ではありませんでしたが、胸をなでおろしました。
しかし、先生から、
「今日のこと、ブログに書いてましたね」
「はい」
「ああいうことは書かない方がいいですね」
と忠告されてしまったのです。
「そうですよね」
妻がかぶせるように言いました。こうした予告をすると、答えを待つ報道関係者に何らかの発表をしなければならなくなるからです。
「しまった!」
と意気消沈する私の脇で、妻が先生と、「この微妙な診断結果をブログにどう書くか?」という相談を始めました。
まるで芸能プロダクションの社長が事務所のタレントの診断結果をどう発表するか話し合っているかのようでした。
