子どもをできるだけ自分とは離すように育てた

内田 (拍手)すごい。思わず拍手してしまいました。お子さんは3人ですね。

阿刀田 みんな自分で大人になったみたいな顔をしているけれど、家内がよく育ててくれたと思います。長男はもう60歳ですからね。

内田 私の夫と同い年です。

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阿刀田 ご主人は華やかな芸能界にいるわけだから、普通と違うご苦労もあったでしょう。

内田 そうですね。特に子育てにおいてはちょっと気を遣うところがあったように思います。

阿刀田 私なんかでも、子どもをできるだけ自分とは離すように育てました。苗字が苗字ですからね。

内田 学校でも「あの大作家の息子か」と、すぐ言われちゃうわけですね。

阿刀田 大作家と言われればいいけど、「あのつまんないのを書いてるヤツの息子か」って。 もっとも、子どもたちは私の作品をほとんど読んでいません。急に自分が出てくるから嫌なんだそうです。私は家族を小説に登場させることは皆無に等しいのですが、どんなにフィクションを作ってもどこかに自分が投影される。ということは、どこかに子どもたちも出てくるので。

1979年、書斎で執筆。博覧強記の人は後に巨大な書庫も作ったが、今は蔵書はほぼ手放したという。 ©文藝春秋

内田 奥様はどうでしたか。

阿刀田 家内もそんなに読まなかったと思います。あまり関わられると、かえって書きにくい。ですからいい距離感だったと思います。

内田 反省しました。私は夫の仕事について率直にダメ出ししてしまうんです。もっとも、夫は褒められるよりむしろネガティブなことを聞きたいという性格ではあるんですが(笑)。

家内を施設に入れたとき、子どもたちが協力し合ってくれた

阿刀田 子どもたちもベタベタ仲がいいわけではなかったけれど、家内の病状が悪くなって施設に入れたとき、3人が協力し合ってよくやってくれたんですよ。長男がいい施設を探して、次男がテレビや机を整え、「お母さんは庭の木を眺めるのが好きだから部屋から木が見えるところを選んだよ」なんてことをやってくれたり。 娘は衣服、下着、タオルなど身の回りのものを女性ならではの目線で一生懸命面倒を見てくれたり。こいつら、いざとなったらちゃんとやってくれるんだと思った。それはちょっとした発見でしたね。