現地の人ですら「神頼み」
海水温が高すぎて産卵や接岸が遅れているのでは? という一説もあるが、いまだに理由は解明されていない。基本的には神頼みで、関係者さえも「水揚げがあるかどうか、当日になるまで分からない」「絶対にないと断言できるのは、台風直撃で漁がない日くらい」とのこと。
現地到着しても食べられない事態を避けるために、中土佐町では当日の入荷情報を観光協会のホームページに掲載している。しかし情報が出始めるのは朝8時頃で、県外から訪問する場合は、久礼近辺か高知市内で前泊の必要がある。
では、朝8時台に「入荷なし」情報を受け取った場合は、どうするのか?
言うまでもない。翌日のメジカ入荷を待てばよい。幻のギャンブルグルメ「メジカの新子」を食べるなら、「こまいこと言いよったち、いかん」(土佐弁で「細かいことを言ってもしょうがない」)くらいの覚悟と度量を持って、どっしり待つべし、待つべしなのである。
筆者も今回の取材で3日間の日程を組んで高知入りしたものの、初日は水揚げがなく久礼への訪問を朝8時過ぎの時点で中止。翌日に辛うじてようやくメジカの新子にありつけた。
極度に傷みやすく、食べられるのは「ほんの一瞬」
また、メジカの新子は、極度に傷みやすいとされるサバの2倍は傷むのが早いとされ、作り置きが一切利かない。市場で新子をさばくおばあちゃんは、土佐弁で「おおの、冷やい!」(標準語で「うわぁ、冷たい!」)と叫ぶほどキンキンの氷水に手を突っ込み、手際よく調理していく。
力ずくの手作業で皮を剥き、アジ包丁のような小刀に持ち替えたらサッと三枚におろし、腹骨や血合を熟練技でサッサッと取り除く。作業ごとにまた「冷やい!」と呟きながら魚の身を氷水で洗い、血はつど水で流し……おばあちゃんが「大きな魚を捌く方が、よっぽど手間がかからない」とこぼす捌き作業は、身体は猛暑で手は極寒。手順もいちいち面倒な重労働なのだ。
メジカの新子が珍重される理由をまとめると、旨味がたっぷりで、かつ生食のモチモチ感が絶妙なタイミングが一瞬、ということになる。
