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「泣いたらあかん。今回の150万は授業料や」
私は山一の株を勧める理由ばかり考えていた。しかし、神山さんが何を求めているかは考えていなかった。
「意見を求められたら答えたらええ。でも自分の考えで人の判断を変えさせるときは慎重にならなあかん。買うのも売るのも最終的には本人の責任やけど、営業マンには別の責任がある。お客が何を望んどるか理解することや」
私は言葉が出なかった。気づくと目に涙が浮かんでいた。
「泣いたらあかん。今回の150万は授業料や。そいで上場廃止される前に株券出庫してくれ。記念品や」
そう言って神山さんは豪快に笑った。私はますます情けなくなった。帰り道、晩秋の風が冷たかった。
テレビでは連日、山一證券社長の記者会見の映像が繰り返し流される一方、廃業発表の翌営業日から、支店は戦場になった。
朝、出社すると店頭には長い列ができていた。受付番号札を握り締めた高齢者たちが不安そうな顔で順番を待つ。ふだんは静かなロビーも銀行の取り付け騒ぎのような空気だった。