殺到するお客たち

 窓口担当だけでは到底さばき切れず、投資相談課も貯蓄相談課も総動員されたが、それでも人手は足りなかった。私も外回りを減らし、ほぼ終日窓口対応に回ることになった。同期の中には外訪を優先する者もいたが、私は店頭に残った。

 神山さんに山一株を勧めてしまった後ろめたさもあり、目の前のお客に向き合うしかないと考えたのだ。

 窓口ではさまざまな相談が持ち込まれた。厄介だったのは投資信託だった。株券や債券は比較的わかりやすい。しかし、投資信託は銘柄によって受け入れ方法が異なる。海外資産を組み込んだもの、デリバティブを利用したもの、複数のファンドを組み合わせたもの⋯⋯私自身、初めて見る商品も少なくなかった。

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 資料を取り寄せ、約款を読み、先輩に聞きながら対応する。慣れない作業で一日が終わるころには頭が熱を持ったようになった。

 だが、知識は急速に身についていった。営業で商品を売るだけでは理解できなかったことが、窓口業務を通じてようやく腑に落ちる。顧客に説明するには、自分が理解していなければならないからだ。

 窓口対応で驚いたことがある。顧客の中に、自分の保有資産をほとんど理解していない人がいるのだ。ある高齢男性は書類を広げながら言った。

「この投資信託はどうなるんですか?」

「内容はご存じですか?」

「いや、よくわからんのです」

「購入されたときの説明は?」

「担当者が勧めるからそのまま買っただけなんだけど⋯⋯」

 さらに別の女性客にはこんな人もいた。