どれほど訪問しても契約が取れず、苦しい夏季休暇を過ごしていた新人証券マン。そんな帰省中、会社からかかってきたのは叱責でもミスへの追及でもなく、予想外の連絡だった――。泥臭く足を運び続けた日々が無駄ではなかったと気づき、自分なりの営業術を掴み取っていく奮闘記。
新刊『証券マンひりひり日記――日興証券25年、公益通報の果て、居場所を失い会社を去りました』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目)
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上司からの電話
「大ちゃん、会社から電話よ」
母に肩を揺すられて目を覚ました。一瞬で心臓が跳ね上がる。時計を見ると午後2時。何かやらかしたのだろうか。休暇中に呼び出されるような失敗をした覚えはない。しかし、営業成績は芳しくないのだ。何を言われてもおかしくはない。
「はい、日野山です」
「『毎日通ってた新人が急に来なくなったけどどうしたの』いう問い合わせが商店街からぎょうさん来とるんや」
電話の向こうから聞こえてきたのは藤堂課長の声だった。
「やめたんかって心配されとる。休み明けたら、土産買って戻ってこい。来週は俺が同行する。それじゃあな」
それだけ言うと電話は切れた。私はしばらく受話器を持ったまま固まっていた。
