女性客にいきなり「株を勧めて」もうまくいかない

 家庭内で私の名前が認識され、それは私の信用につながる。取引を始めてくれるお客はたくさんいた。

 一方、女性のお客にアプローチする際は、最初から株を勧めず、まず預金の話をした。

「普通預金の金利はほとんどありません。100万円預けても1年で数百円です。でも物価は少しずつ上がりますよね」

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「それはわかるけど、投資って怖いじゃない」

 女性客は株取引に警戒感がある。たいていこんな反応だ。そこで時間軸を変える。

「お子さん(お孫さん)が大人になる20年後、30年後を考えたことはありますか? 円安になったらどうなるでしょうか。海外旅行は高くなり、輸入品も値上がりします。その時代に備える方法の一つが国際分散投資なんです」

 マンハッタン島を先住民が安値で譲った話、スペインと英国の盛衰、複利の力を説明する“72の法則”⋯⋯投資の本で読んだ話を嚙み砕いて伝えた。

 すると反応が変わる。「株を買いましょう」ではなく、「勉強になります」になる。営業でもっとも大切なのはこの変化だ。商品への興味ではなく、相手との信頼関係。やがて家族全員の口座開設につながることもあった。証券会社の営業というより、家計相談員に近かったのかもしれない。