顧客から銘柄選定を頼まれ、善意から廃業直前の山一證券株を勧めてしまった新人証券マン。激震の「自主廃業」報道に青ざめ、土下座で謝罪する彼に顧客がかけた思いがけない言葉とは――?

 新刊『証券マンひりひり日記――日興証券25年、公益通報の果て、居場所を失い会社を去りました』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目)

廃業した山一證券(写真:時事通信社)

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山一證券「廃業の日」

 ある日の午後、私は顧客になってもらったばかりの神山さんを訪問していた。

 神山さんは貸しビル業を営む資産家で、私の大学の大先輩でもあった。同じ大学出身という縁から親しくなり、ようやく口座を開設してもらったばかりだった。

 応接室でコーヒーを飲みながら神山さんが聞いた。

「何か面白い銘柄あるんか」そのひと言が始まりだった。

「証券会社はどうや? おたくのとこもずいぶん安いな。80円割れてるやろ。150万円ほど買っとこか」

 若かった私は自分の考えを語りたくなった。

「日興も安いですが、山一證券はもっと安いですよ。30円割れていますから、うちの3倍買えます。今後、持ち直せば大きいと思います」

 値上がり余地が大きいと思ったことも事実だ。しかし、それだけではない。

 当時、山一危機説が広がる中で、営業先では連日のように「山一は大丈夫なのか」という話題が出ていた。そんな中、私は山一の営業社員が必死に顧客対応している姿を見聞きしていた。懇意にしている山一営業マンからは直接、愚痴を聞かされた。