味噌汁かぶり泣きながら掃除して…それでも家族に「ジーンときた」ワケ

――棈松さんは、人に対してすごくオープンな印象ですね。

棈松 今はオープンになれたんですけど、そうなるまではいろんな葛藤がありました。

 うちの家庭は放任主義というか、家族全体で僕の病気に寄り添って「一緒に治していこうね」みたいな感じが一切なかった。うちは、ばあちゃんが保育園を作って、父ちゃんも園長、母ちゃんも保育園で働いてって感じで「保育園家系」というか。子育てに関してはしっかりしてるはずなんですけど、この病気に対してどういうふうに考えてるかはわからないんですよ。今でも病気の話とかすることはあるけど、興味を持ってる感じはないです。

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――自分の子どもに自身の専門性を向けない親御さんもいますよね。

棈松 そんな感じです。

©文藝春秋

――トゥレット症だと初めて診断を受けたのは何歳ぐらいでした?

棈松 小4かな? 一通り家庭内で衝突が起きた後にやっとメンタルクリニックに行って、チック症だと言われました。

――家庭内で衝突、というのはどんなことでしょうか。

棈松 朝、父親と一緒にご飯食べてる時とかに「ウンウンウン」って唸るチックが出てしまって。イラッとした父ちゃんが持ってた箸をバーン! って叩きつけて、折れて。さらに机をバーン! っとひっくり返して、俺が頭から味噌汁かぶって、みたいなことになって。「掃除しとけ!」って言われて。俺、あんまり口数が多い子じゃなかったから、ただ泣きながら掃除して。

 うちの父ちゃんも物心つかないぐらいの頃に父親が蒸発しちゃったから、自分の中の父親像っていうものがなかったんでしょう。そのうえ「子どもってこう育つだろうな」って自分の中のイメージを、俺が大きく外れてきちゃったわけだから。当然パニックになりますよ。

 それで、その日学校行ったら、いつも明るい俺があまりにも暗いから、先生に「どうした?」「体調でも悪いのか?」って問い詰められて。だから「実は、今朝こういうことがあったんです」って話して。

「でも親には内緒でお願いします」って頼んだけど、母ちゃんには連絡が行ったみたいで。家に帰ったら玄関に置き手紙と3,000円が置いてあって、手紙に「こんな父ちゃんでごめんな」って書いてあった。

――ああ……お父さん!

棈松 親父も葛藤してたんだろうなと思って。俺もなんか結構ジーンときましたね。