自分の意思とは関係なく体の一部分が動く「運動チック」や、声や音を出してしまう「音声チック」が頻繁にみられる神経の病気・トゥレット症。現時点では治療で症状を完全に消失させることは難しいとされている。そんな症状を抱えながら、前向きに生きる棈松怜音(あべまつ・れおん)さん(31)に3回にわたり、お話をうかがった。
第2回は、トゥレット症に悩まされ行き詰まった“人生の暗黒期”、そしてそこから脱し、Uber Eatsの配達員として活躍するまでの20代をたどった。
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「何も生み出せない」「死のうかな」20代で葛藤した末に、タガが外れて
――福岡にいらした20代の頃、トゥレット症がきっかけで喧嘩になったこともあったそうですが、どういう状況だったんでしょうか。
棈松怜音さん(以下、棈松) トゥレット症に偏見を持ってほしくないんですが、「一回さらけ出したい」という気持ちもあるのでお話しします。
福岡に移住したタイミングでちょうど咳を吸い込むチックが発症しまして、そのときはチックの負荷にノドが耐えられなくて、声が出なくなっちゃったんです。自分は人と喋ったりするのもすごく好きだから、気持ち的にもやばくて。自暴自棄になって、本当にもう「死のうかな」って思いました。
――過去一番の暗黒期という感じ?
棈松 そんな感じかもしれない。23歳ぐらいで「何も生み出せないな、俺」とか、いろんなことで葛藤した時期でもありました。そのとき勤めてたのが、博多の飲食店の会社で和食系。厳しくて、結構大変な職場でした。その会社で飲み会があって、めっちゃ酒に弱いわけでもないのに、今までにないような酔い方をして、その帰り道に知らない人と揉め事を起こしてしまったんです。
多分、自分の中のストレスというか、いろんなことをひっくるめて、全てのタガが外れたような感じだったのかもしれない。おそらく、最初は病気へのからかいで起きたイザコザだと思うんですよ。だけど、正直、そこも覚えていないんです。
――悪酔いして、記憶が飛んでしまったんですね。
棈松 朝起きて、周りから聞いて状況を把握しました。ショックを受けて、いろんなことを考えました。憧れの県だったはずの福岡に、つらい思い出を残してしまった。
自分の人間性って本来はある程度、俯瞰できるじゃないですか。それまでも怒ったり、イラッとすることはあったけど、そこまで自分を抑えられなくなったのは、そのとき一度きりです。リミッターが外れた原因がお酒にあったのかもしれないですけど。その頃、本当に先が見えなかった。

