心機一転、名古屋でUber Eats配達をスタート

――その後、心機一転、現在もお住まいの名古屋に移って。

棈松 名古屋では屋台村みたいな店をやりました。小さいブースを借りて、九州料理と沖縄料理の居酒屋を1年くらい。お客さんがつくまで半年かかって、なかなか利益は出なかった。で、1年で店舗契約の都合で店を閉めることになって。それが24、5歳ぐらいですね。

 そこからUber Eatsの配達を始めたんです。今も続いているので、もう7年くらいやってますね。

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――最初Uber Eatsの仕事も大変だったそうですね。

棈松 めっちゃ大変でしたね。悪い評価をつけられちゃって。Uberってスマホ1つで仕事ができるスタイルで、接客指導や配達の手順っていうのを教えてくれるわけではないんです。

 で、そのとき俺は音声チックがひどくて、もうずっと声が出てるような感じで。声もでかいから、クレームじゃないけど“BAD”評価をつけられちゃって。

©︎文藝春秋

 お客さんに対する丁寧な接し方もあんまりわからなかったし、それでどんどん評価が落ちていって、始めて1カ月くらいで、高評価率が64%になって。Uberの管理をするパートナーセンターってところに「これはヤバイ」って言われて。で、そこから自分で工夫して、改善して。もう今は、99%か100%がいい評価です。

――あらかじめ、アプリ上に「チック症があります」というメッセージを出しておいて、渡すときには威圧感のないようにする工夫をされてるんですよね。

棈松 そうです。なるべく落ち着いたトーンで、笑顔で渡すというふうにも心がけてます。

「おい、お前うるせえ!」配達中、理不尽な50代夫婦にバカにされ

――いろいろ大変な10代、20代ながら、振り返ると、やりたいお仕事をちゃんと選んできていらっしゃいますね。

棈松 でも職場内でごちゃごちゃしちゃったりとか、問題は多いです。昔、車の製造工場にいたときも、ラインサイクルで隣の工程の人が近いので、横でずっと「アッアッ」って声を出してるから「うるさくて耐えられない!」と言われたりとか。どこに行ってもやりづらかったですね。

©︎文藝春秋

 Uberの配達先では、マンションのエントランスで50代くらいの夫婦に「おい、お前うるせえ!」って言われて。

「すいません俺、チックって病気あって。声出ちゃうんですけど、配達したらすぐ出るんで」って言ったら「お前、何? 障がい者? あ~キモ!」「障がいあっても仕事頑張ってます、とか俺知らねえから」「い・い・か・ら、黙れ~」って、旦那さんが散々俺をバカにするんです。奥さんも隣で見て笑ってるし。

――ひどいですね。

棈松 もう涙が出てきて「あなた今、うるさいって思ったかもしれないですけど、俺は子どもの頃からこれと向き合ってるんです。だからこの場ではちょっと許してもらえると幸いです」って言っても「あ~~~あ、はいはいはい!」ってまたバカにされて。

 本当は俺、反論することもできると思うんですよ。だけど、それをやってしまうと、結局、病気の印象が悪くなる。涙を流して耐えることしかできなくて。「ちょっと正直どうしたらいいかわからないわ」って、友だちに泣きながら電話しました。