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「頭がいいだけじゃダメ」という組織での生き方

 そういえば財務省時代も、自らアピールしてポストを得ている。2004年に同期の福田氏・佐川氏と同じく主計官に昇進するのだが、週刊新潮がそのときの裏話を披露している。「主計官に昇進したのも、猟官運動をしていた彼女を見て、山拓が財務省の幹部に相談した結果」だそうで、かくして山崎拓の縄張りである防衛担当の主計官となる(注4)。「可愛いだけじゃダメかしら」とは仏映画のタイトルだが、「頭がいいだけじゃダメ」なのが組織での生き方なのだ。

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 頭がいいだけでは出世できない。それはどこの世界でも同じこと。では、どういうひとが出世するのかといえば、実績を上げる者でもなく、上司に気にいられた者である。たとえばジェフリー・フェファー『「権力」を握る人の法則』は冒頭で、社会心理学者の調査などから業務実績と昇進には関係がないことを明らかにし、出世するには地位のある者に自分の存在を気づかせることが大事である、そして「上の者が気にすること」を気にするのが重要だと説く。片山さつきの大臣や主計官への道はそのお手本のようだ。

「おぼえがめでたい」とは何か?

 日本語に「おぼえがめでたい」なる言葉がある。上の立場の者からの評価が高いという意味だ。実はこれがパワハラと背中合わせにある。地位のある人物に気にいられようとする者が、そのために「自分の顔を立てろ」「自分の顔を汚すな」と下に無理強いをする。それが下へ下へと連鎖していく。そこにあっては得をするのは上の者だけである。

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 そういえば森友問題の最中、週刊ポストに佐川氏を安倍首相が「官僚の鑑」と評価しているとの記事があった。「佐川長官はいわば総理の身代わりとなって批判を浴びながら、何一つ弁解しない。汚れ役になることを厭わず、自分の体面より政権を守ることを第一に考えている。総理も“佐川君こそ官僚の鑑”と高く買って」いる(注5)と。

 佐川氏は安倍首相の「おぼえがめでたい」のであった。その一方で、下に苦労がいってしまい、近畿財務局の職員が自殺に追い込まれている。その遺書には「決裁文書の調書の部分が詳しすぎると言われ上司に書き直させられた」「勝手にやったのではなく財務省からの指示があった」「このままでは自分1人の責任にされてしまう、冷たい」(注6)などと書かれていたという。