医師の告知に頭のなかが真っ白に

――大学病院以前の医師は、がんを疑わなかったのでしょうか?

小枝 可能性は0ではないけど、確率的には低いというように考えていたのだと思います。年齢的に若いことなどもあり、初診から疑うのは難しいと思います。大学病院以前に、念のために詳しい血液検査や腫瘍マーカーを測定しましたが、その時はがんを疑う所見は見られませんでした。

――告知のとき、覚えている風景を教えてください。

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小枝 当時、入院中に絶飲食をしていたこともあり、私は車椅子に座って診察室に入りました。告知のときは、父と母も一緒でした。「スキルス胃がん」「転移している」などの病態説明が医師からあり、文字通り頭のなかが真っ白になったのを覚えています。言葉としてはもちろん理解はできるのですが、何も思考できないし、何を思えばよいのかも正直わかりませんでした。血の気が引いていくのを感じました。

――ご両親のご様子は。

小枝 まったく顔を見る余裕がありませんでした。告知されたあと、私はふらつきなどもあり、ベッドに横にならせてもらいました。

 その後、家族と話す機会があり、そのときには気丈に励ましてもらいました。けれど、今になって両親の気持ちを考えると、どれほど辛かっただろうとは思います。

「治療をおこなえば1年強くらい」

――医師からはどのような話がありましたか。

小枝 医師は、「強く勧めるものではない」としながらも、抗がん剤による治療を提案してくれました。その後自分でネットで調べて行く中であくまで統計として、5年生存率はすぐに目に入ってきました。ステージ4の胃がんは10%未満という過酷な数字だったと思います。スキルス胃がんとなると更に厳しいはずです。

 医師は、「治療をしなければ半年ほど、治療をおこなえば1年強くらいだと言われているけれども、個人差のあることなので自分にははっきりと数字を示すことはできない」と正直に伝えてくれました。また、「これからご自身が大切にしたいことは何か」という、私の価値観についても、気持ちを寄り添わせてくれました。私はぱっと頭に浮かばなくて、「美味しいものが食べられたり、病気になる前の日常生活が少しでも取り戻せたらいいと思っている」というような返答をしたと思います。