記憶がすぐに初期化される
見当違いな被害者意識を抱いて周囲の人を困惑させる人にありがちなのが、記憶がすぐに初期化されてしまうという心理傾向である。
新人を指導する立場にある先輩や管理職がしばしば嘆くのが、仕事のやり方を何度も教えているのに、教わっていないと言い張るから困るといった内容である。
何度教えても間違えるため、
「前にも言ったけど、そのやり方じゃダメなんだよ。ちゃんと教えた通りにやってもらわないと」
と注意したところ、
「何も教わってませんよ。ちゃんとしたやり方を教えてください」
と言う。もう何度も教えているのにと思いながらも、本人が覚えていないのだから仕方ないと思い、またていねいに教えるのだが、また数日後に同じミスをする。そして、教えた通りにやるように注意すると、
「そんなやり方、教わってません」
と言い出す。
そのようなやりとりがしょっちゅうで、先輩も管理職も呆れつつ、これでは戦力にならないと困惑する。だが、当人は教わった記憶がないため、意地悪をされていると本気で思っている。そして、
「先輩が何度も教えてるって嘘を言って、何も教えてくれないから、仕事ができるようにならないし、上司は先輩の言葉を信じてるみたいで、私は正当に評価してもらえない。先輩は自分の評価を上げるために私の足を引っ張るんです」
などと周囲に触れ回る。
一緒に仕事をしていれば何度教わっても覚えていないのだということがわかるのだが、一緒に仕事をしていない人は、そうした事情がわからない。
しかも、本人は教わった記憶がほんとうにないので、先輩が嘘を言っていると本気で信じているため、嘆きの言葉が真に迫っており、事情をよく知らない周りの人は意地悪をされていると思ってしまうから困るのだという。
このように本人に記憶がないと、意地悪をされているといった被害者意識をもってしまう。スマホ認知症という言葉もあるように、記憶機能をスマホに依存することで記憶能力の低下が見られるようで、このところ同種のトラブルが非常に多い。