好きなものにおいてこだわりが強く発揮される作家・千早茜さんの『しろとくろの偏愛』の刊行を記念して、菓子研究家の福田里香さんとのトークイベントが開催されました。

 参加されたみなさんと一緒に、本書内で「喉にしたたりそうなほど柔らかかった」と書かれたあべ川餅を食べながら語った餅の魅力とは。(全2回の1回目)

左・福田里香さん 右・千早茜さん

◆◆◆

ADVERTISEMENT

千早 みなさんのお手元にあるのが、「餅甚(もちじん)」のあべ川餅なんですけれど、まさかお配りすることになると思わなかったんで、すこし緊張しています。食べてみて、本に書かれている食感じゃないと思われたらどうしようと。川の流れのように淀みがない柔らかさという意味で「水のよう」という表現をしたので、ゴクゴク飲むくらい水っぽいわけじゃないですよ。あと形が小さいんですよね。500円玉ぐらいのお餅なので、ひょいひょい淀みなく食べられるんです。

イベントで配った「餅甚」のあべかわ餅

福田 そうなんですね。本を読んですごい楽しみにしてきたんです。まずそのお店の名前も存じ上げなくて。

千早 福田さんでも知らないものがあるんですね。

福田 何も知らないと思ってください。特にインスタ時代になったら、世界中に全然知らないお菓子があって、毎日インスタを開くたびに絶望みたいな……。これを全部食べずに死ぬのかみたいな感じあるじゃないですか。全部チェックチェックチェックという。

千早 この本にでてくるものは全部ご存知だろうと思っていました。

福田 全然知らないの、ありました。この本は、餅から始まるじゃないですか。筆圧たけえ!と思ったんですよ。私も本を書いたことがありますが、構成的には最後に向かってテンションをあげていくのが王道じゃないですか。これは最初から相当飛ばしているけど大丈夫かな?と思ったら、チョコレート編はまたすごくって、これは本物の人だと。

千早 『わるい食べもの』という別の食エッセイもあるんですが、これでも『しろとくろの偏愛』は毒を吐かず平和なんですよ。餅編の連載は雑誌の「天然生活」だったので、そこまで強火にはせずに、優しく、おばあちゃん家に行くような気持ちで書いています。