好きなものにおいてこだわりが強く発揮される作家・千早茜さんの『しろとくろの偏愛』の刊行を記念して、菓子研究家の福田里香さんとのトークイベントが開催されました。
参加されたみなさんと一緒に、本書内で「喉にしたたりそうなほど柔らかかった」と書かれたあべ川餅を食べながらのイベントレポートです。(全2回の2回目)
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福田 この本は両棒餅から始まるでしょう? 私も大好き。そして同じ勘違いをしちゃって。どんなジャンボお餅なのかと思ったら両棒という。また鹿児島のあの風景がいいんですよね。私が行ったお店は海の近くで桜島が見えて。お餅ってやっぱりちょっと旅を感じます。
千早 私は、餅は臨場感をおぼえますね。このあべ川餅もかなり美味しいですが、自分で作る磯辺餅が好きで。家で磯辺餅を焼くときは、さあ食べるよと言った瞬間に、家族が来なかったらすごい怒ります。硬くなるじゃないですか。お餅は絶対に臨場感が大事だから、家族が集まっている、家族団欒の象徴の感じがします。
福田 磯辺餅に使う餅のこだわりはあるんですか?
千早 「餅甚」ののし餅を買ってみたら、焼いた時にかなり柔らかくなってしまって。美味しすぎた。なので、普通のお餅で……といっても農家さんが作っているお餅とかですかね。お米が香る方がいいので。でも、私は磯辺餅の餅ってそんなに記憶に残る餅じゃなくていいんですよ。
福田 それはどういう意味?
千早 この餅じゃなきゃ磯辺餅が作れない、みたいな餅だと困るんですよね。日常のものだから。
福田 じゃあ海苔が大切。
千早 海苔大切です! 有明の海苔に出会ってから有明海から離れられなくなりました。昆布は利尻から離れられないんですけど。
福田 わかります。私も海苔は有明のですね。有明海沿岸で育ちましたので。あとこの本の中でなかったなぁと思ったのが砂糖醤油。つけて食べないですよね。九州は案外砂糖醤油なんですよ。
千早 それ、うちの父がやっていました。砂糖を溶かさないですよね?
福田 ジャリジャリしたままですね。九州のお醤油って甘いじゃないですか。刺身につける醤油も甘い。そのせいで子どもの頃は刺身が嫌いだった。大人になって気づいたけど、江戸時代の長崎は海外から砂糖が輸入されていた地。その長崎から伸びるシュガーロードの影響なんですよね。辞書を引くと「甘い」を「うまい」って読むくらいで、ほんの少し前まで味は甘いほど豪華だった。お餅につけると美味しいとなったのかなと思います。

