誰もが餅の境界線を持っている

福田 わらび餅はわらび粉じゃないですか? まあでもわらび餅っていう名前だから餅って言ってるけど、餅じゃないよね。

千早 餅じゃないものにも餅って……もちもちしてたら餅だと言いがちですよね。でも、わらび餅ってもちもちという擬音になっていますよね。

福田 わらびプルンみたいな感じじゃないですか。わらプルみたいな。

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千早 先にゼリーという単語があったら、わらびゼリーだった気がします。あと、五平餅は米でしょ、っていう人いるんですけど。

福田 五平餅は甘いんだっけ?

千早 甘めの味噌ですよね。甘くないと餅じゃないですか?

福田 無色透明までは餅だと思うけど、無色というか無色味。

千早 ああ、米の味ってことですね。

福田 米の味だとこっちからこっちは料理というかご飯になっちゃう。こっちからはお菓子的なもので……とか、だんだんわからなくなっちゃうね。

千早茜さん

千早 取材で「千早さんにとって餅はおやつですかご飯ですか」と聞かれたんですが、ご飯だとしてそれで足りますか?って気分にもなります。でも確かにおやつにするにはちょっとハードな餅もありますしね。餅と言っているものの範囲が広すぎますよね。だからもう多分独自の境界線がみんなあるんだなと。

福田 千早さんの中の餅はどこまでですか?

千早 私は結構米粉使ってたらいいと思っていて、うるち米でも糯米でも米の香りがしたら餅なんですよ。

福田 平気でわらび餅とか言っているけど米粉は入ってない。大福は餅…。

千早 いちご大福も餅。フルーツ大福も餅…そうなると求肥は餅かっていう問題が。

福田 求肥は求肥だよね?

千早 となるとフルーツ大福はかなり求肥寄り?餅分布図みたいな本、ぜひ出してください。

写真=深野未季

プロフィール
千早 茜(ちはや・あかね)
1979年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2008年「魚神」で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で泉鏡花文学賞、「あとかた」で島清恋愛文学賞、「透明な夜の香り」で渡辺淳一文学賞、「しろがねの葉」で第168回直木賞を受賞。著書に『マリエ』『雷と走る』『眠れない夜のために』『燻る骨の香り』、食エッセイ「わるい食べもの」シリーズなど多数。

福田里香(ふくだ・りか)
福岡生まれ。武蔵野美術大学卒業。お菓子が専門の料理研究家。書籍や雑誌、onlineへのレシピ提供、菓子メーカーの商品開発なと幅広く食の分野で活躍中。著書に『民芸お菓子』『いちじく好きのためのレシピ』『新しいサラダ』『物語をおいしく読み解く フード理論とステレオタイプ50』、共著に『R先生のおやつ』など多数。

しろとくろの偏愛

千早 茜

文藝春秋

2026年9月3日 発売

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