好きな餅を全部保存している餅フォルダー

福田 おばあちゃん家でもすでに筆圧が高いです。

千早 チョコレート編の方は「CREA WEB」での連載で手加減なく愛をぶつけました。チョコ連載の担当編集もたいがいおかしい人で、キャラメルに狂っているんですよ。だから問題ないという感じでした。

福田 白と黒というのもいいですよね、タイトルにも謎があって。

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千早 4冊だしている『わるい食べもの』は本当に偏屈で、食エッセイというジャンルで勝手をしていて、おいしいものだけでなく嫌いなものの悪口も書くし、料理が好きって言ったらいいお嫁さんになるよとか言われる世間の偏見に対しても文句を言うエッセイなんですが、この本は本当に好きなものだけについて書いています。私にとってめずらしい食エッセイです。

千早茜さん

福田 好きなものはどうやって記録しています?

千早 餅に関しては、スマートフォンに餅メモを作っていて、餅のフォルダーがあるんですよ。そこに好きな餅とか食べてみたい餅を全部保存しています。連載していた時もここから引っ張っていったんですよね。餅は季節のものも多いので、そうしないと先取りの雑誌では時季に合った餅を紹介できなくて。

福田 メモは写真で?

千早 いえ文章化しています。能登のおだまきとか台湾のピーナツ餅とか、非常食の餅とかそういうのが書いてあって。写真ではなく文章の方が思い出せるんです。

福田 どんな味だったかとかは書かない?

千早 それは日記に書いていて、日記を遡れば見つけられます。チョコは写真に撮ってSNSにあげているから、食べた感想や構成を知りたいときは自分のSNSを検索します。チョコのメモもあるんですが詩みたいになっちゃって。板チョコは優しいけどタブレットは油断がならないとか、観念的な感じで書いてしまうことが多いですね。

福田 私も食べたものとか、携帯ですごく撮る方ですね。インスタをやっているのもそのためみたいな感じです。昔から筆記用具で字を書くのが苦痛で、手と脳が連結しないというか、ワープロやPCが普及してからめちゃくちゃ書けるようになりました。PC以前は日記なんかも一切つけられなかったんだけど、筆記用具というツールが私に合わなかっただけだったんだな、と。写真を撮って、そこに文章を打つことはかなり好きです。

千早 ビジュアル重視なんですね。ビジュアルといえば、福田さんはラッピングも大事にされているイメージがあります。

福田 インスタに載せているお菓子は全部ビジュアルが好きです。CDやレコードじゃないけどお菓子は「ジャケ買い」します。100%当たります。パッケージが好みならば味も必ず好き。パッケージは必須ですね。

千早 さっきも控室のおやつをすぐ撮っていましたよね。どんなアングルで撮るんだろうと思いながら拝見していました。

写真=深野未季

プロフィール
千早 茜(ちはや・あかね)
1979年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2008年「魚神」で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で泉鏡花文学賞、「あとかた」で島清恋愛文学賞、「透明な夜の香り」で渡辺淳一文学賞、「しろがねの葉」で第168回直木賞を受賞。著書に『マリエ』『雷と走る』『眠れない夜のために』『燻る骨の香り』、食エッセイ「わるい食べもの」シリーズなど多数。

福田里香(ふくだ・りか)
福岡生まれ。武蔵野美術大学卒業。お菓子が専門の料理研究家。書籍や雑誌、onlineへのレシピ提供、菓子メーカーの商品開発なと幅広く食の分野で活躍中。著書に『民芸お菓子』『いちじく好きのためのレシピ』『新しいサラダ』『物語をおいしく読み解く フード理論とステレオタイプ50』、共著に『R先生のおやつ』など多数。

しろとくろの偏愛

千早 茜

文藝春秋

2026年9月3日 発売

次の記事に続く 「わらび餅は『わらびプルン』?」「どこからが餅?」千早茜×福田里香が白熱した“お餅の境界線”