《第3の心臓:データセンター アメリカで吹き荒れる新規建築への逆風》
ソフトバンクの命運を握るOpenAIが最先端AIを動かすためのデータセンターにも、陰りが見えています。
ニューメキシコ州で2.45GW級の巨大AIデータセンター「Project Jupiter」を建設していたオラクルが、電力確保の遅延や水・大気の使用をめぐる訴訟の長期化に巻き込まれ、データセンターの建設を取り巻く環境が急激に悪化したのです。
ソフトバンク、OpenAIとともに巨大AIインフラを作る「スターゲート構想」はオラクルがデータセンターを作ることに依存しているためここが止まると全てがストップします。
さらに、すでに最高利率9.75という高コストで社債を刷って資金を調達しているソフトバンクにとって「AIインフラ企業の社債は危ない」という空気が広がれば、今後の資金調達コストはさらに跳ねあがります。
孫正義が10兆円をつぎ込んだ大勝負を支える3段ロケット。その土台であるデータセンターで上がった火の手を抑え込めるのかが命運を分けるでしょう。
資金でも技術でもない、自力では解決できないリスク
孫正義の一点張りは、OpenAIという「未来」に張り、アームという「含み益」を担保に差し入れ、そのカネでデータセンターを建てて実現するという三段ロケットです。Jupiterの一件は、その三段目の点火に、資金でも技術でもない"地面と電線と選挙"(ニューメキシコ州民の65%がデータセンターに反対、中間選挙で争点化)というリスクが潜んでいることを可視化しました。
AIデータセンターを動かすGPUを何層も積み上げても、9%で社債を刷っても解決できない種類の壁です。
締めに、言葉の妙を一つ。今回オラクルが持ち出したのは「フォース・マジュール=不可抗力」でした。孫正義という投資家のキャリアを振り返ると、アリババという幸運の一撃も、WeWorkという不運の一撃も、結局は"人智を超えた何か"に左右されてきました。その勝負師がキャリア最大の賭けでいま直面しているのが、法律用語で言う"不可抗力"そのものだった――この皮肉ほど、このストーリーの締めにふさわしいものはないと思うのです。
かつて彼を天国に押し上げたのも、地獄へいざなったのも、いずれも本人の計算を超えた"外部の力"。またしても今回も計算通りにはいかない運命の様に見えるのです。
AI帝国の三段ロケットの点火を左右するのは、GPUの性能でも、社債のクーポンでも、決算の巧拙でもなく、ニューメキシコの乾いた大地に電線を引けるか、州最高裁が水と大気の許認可を認めるか、そして11月の中間選挙で「データセンター反対」の民意がどう転ぶかという、経営者の手が届かない領域です。
アームが上がれば賭けが打てる。アームが崩れれば全体が揺らぐ。OpenAIが上場すれば含み益は現金化への道を得る。
しかしその果実を生む工場(データセンター)が、"地面と電線と選挙"で建たなければ、三段ロケットは三段目で失速する――これが2026年秋、勝負師・孫正義が立っている場所です。
投資家に求められるものは、彼の博才に賭けることでも、リスクに怯えることでもなく、3つの心臓の拍動を、それぞれ心拍数脈拍心電図でキチンと測り続けることだと思うのです。
