「世代間連鎖」では何が受け継がれるのか
傷つけられた子どもが大人になり、自分の子どもへ同じことをしてしまう。この現象は「世代間連鎖」という言葉で語られることがある。
たしかに、親から学んだ反応が、次の世代へ持ち越される可能性はある。
母親が不機嫌によって家族を動かしていたなら、自分も不機嫌な態度で要求を通そうとすることがある。母親が罪悪感を使って従わせていたなら、娘に「あなたのために、こんなにしてあげたのに」と言ってしまうかもしれない。失敗を厳しく責められて育った人が、自分の子どもの失敗に過剰な恐怖を感じ、先回りして行動を管理することもある。
しかし、ここで受け継がれているものを、漠然とした「毒」や「悪い血」と考えるべきではない。持ち越される可能性があるのは、怒り方、相手を動かす方法、不安への対処、失敗の意味づけ、関係を修復する方法といった、具体的な反応のパターンである。
子どもは、親が教えた道徳だけを学ぶわけではない。親が困ったときに、実際にどのように振る舞ったかを見ている。
家族の誰かが失敗したとき、その話を聞いたのか、それとも頭ごなしに責めたか。意見が食い違ったとき、言葉による擦り合わせを試みたか、不機嫌や沈黙によって相手を従わせたのか。親自身が間違ったとき、謝ったのか、言い訳をしたり、なかったことにして押し切ったりしたのか。そうした日々のやりとりの観察によって、「人間関係とはこのように動くものだ」というモデルを学習するようになる。
世代間連鎖とは、親から子へ、何か邪悪な本質が移されていく現象ではない。過去の環境で繰り返し学習された対人関係における反応やパターンが、別の相手との関係でも再利用される可能性を指している。世代間連鎖は予言ではなく、あくまでもパターンが移行する可能性を示した言葉にすぎない。
