「兄は同じ家で育ったのに、なぜ自分だけが苦しいのか」そう感じたことはないだろうか。きょうだいが同じ屋根の下で暮らしていても、それぞれの経験する“家庭”はまったく異なる。

 親の影響が一律ではない理由を、心療内科医の鈴木裕介氏が『毒親グレーゾーン 親の目から自由になれない大人への処方せん』(日経BP)でわかりやすく解説する。(全4本の1本目)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

同じ親から生まれても、同じようには育たない

 親の影響を考えるとき、きょうだいの存在が混乱を生むことがある。

「兄は同じ家庭で育ったのに、親との関係で悩んでいない」「妹は母と仲がよい。自分だけが根に持っているのではないか」。しかし、きょうだいは同じ家に住んでいても、まったく同じ家庭環境を経験しているわけではない。

 第一子が生まれたときと、末子が生まれたときでは、親の年齢や経験が違う。経済状態や夫婦関係が変化していることもある。ある子どもが幼かった時期には親が仕事で余裕を失い、別の子どものときには状況が落ち着いていた、ということもあるし、気質による相性も影響するだろう。

写真はイメージ ©AFLO

 親と思考パターンや気質が似ている子どもは理解されやすく、異なる子どもは「育てにくい」と感じられることがある。活発な子どもを好ましく思う親もいれば、静かで従順な子どもを育てやすいと感じる親もいる。性別や出生順によって、期待される役割が違ってしまうことは未だに残っているし、「長男だからしっかりしなさい」「女の子だから母親を手伝いなさい」と直接言われなくても、家族の反応から役割が伝わることはある。

 また、同じ出来事でも、受け取る側の年齢や状態によって意味は異なる。

 たとえば、親が長期間入院したとき、中学生の子どもと幼児では理解できることも対処する力も違う。同じような叱責を受けても、気質やその時点で持っている支えなどによって受ける影響は異なる。したがって、きょうだいが「平気で適応的に見えること」は、自分が影響を受けていない証拠にはならない。